相続後の株の名義変更をスムーズに進めるための方法を弁護士が解説!

株式を譲り受けたり相続したりした際には、必ず名義変更の手続きが必要です。たとえば、親から株式を受け継ぐ場合、生前贈与か相続かによって手続きが異なります。また、上場株式か非上場株式かによっても、手続きや税金の取り扱いに違いが生じるため、それぞれのケースに応じた対応が求められます。

目次

株式の名義変更はタイミングと税金で異なる手続き

たとえば、父親名義の株式を長男が受け取るケースを考えます。この場合、父親が生きている間に譲渡されるのであれば「贈与」として扱われ、贈与税が適用されます。贈与税は、一定額以上の財産を受け取った際に申告と納税が必要です。

一方、父親が亡くなった後に株式を相続する場合は「相続」となり、相続税が適用されます。この場合も、他の財産と合わせて一定額を超えると申告と納税が求められます。

また、株式が上場しているか非上場かで財産評価の方法や手続きが異なります。上場株式の場合と非上場株式では、それぞれに合った評価方法や手続きを行うことが重要です。

上場株式の生前名義変更

名義変更の手続き内容

上場株式の名義変更を生前に行い、贈与とする場合の手続きを説明します。たとえば、父親が長男に「今持っている株式を譲る」といったケースです。この名義変更によって、父親から長男に財産が移転し「贈与」として扱われます。そのため、株式の評価額に応じて長男は贈与税の申告と納税が必要になることがあります。

名義変更は、上場株式の場合、取引している証券会社を通じて行われます。たとえば、父親が楽天証券で保有しているトヨタ自動車の株式を長男に贈与する場合、その手続きは楽天証券を介して行います。

名義変更に必要な書類

証券会社によって必要書類は異なる可能性がありますが、楽天証券の場合、以下の書類が必要です

  • 贈与契約書のコピー
  • 贈与者の印鑑登録証明書
  • 贈与手続依頼書

また、手続きには移管手数料がかかり、1銘柄につき2,200円、5銘柄以上では一律11,000円です(楽天証券やSBI証券の場合)。手数料は贈与者が負担します。

名義変更の際、受贈者も贈与者と同じ証券会社に口座を持っている必要があります。

名義変更時の税金と評価方法

名義変更が完了すると、贈与は正式に成立します。贈与税がかかるかどうかは、贈与を受けた人がその年に合計でいくらの財産を受け取ったかによります。

贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。暦年課税では、年間110万円の基礎控除を超えた部分に対して贈与税がかかります。相続時精算課税では、合計で2,500万円までの贈与財産に対して贈与時には課税されず、贈与者の死亡時に相続財産に戻して相続税を計算します。

2023年度の税制改正により、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が新設され、2024年から適用されます。

贈与された株式の評価額は、以下の4つの方法のうち最も安い価格で評価されます

  1. 贈与時点の最終価格(終値)
  2. 贈与月の終値の平均
  3. 前月の終値の平均
  4. 前々月の終値の平均

名義変更後、評価額が基礎控除の110万円以内であれば贈与税はかかりませんが、超える場合は贈与税の申告が必要です。また、相続時精算課税を利用する場合は、確定申告が必要となります。

非上場株式の生前名義変更について

名義変更の手続き内容

非上場株式とは、東京証券取引所などの市場に上場していない株式のことで、未公開株とも呼ばれます。これには大企業の中にも非上場の企業があり、たとえば竹中工務店、YKK、サントリーホールディングス、エネオス、森ビル、日本経済新聞社などが該当します。これらの企業の株式は非上場のため、一般の人が自由に購入することはできません。中小企業の株式も基本的に非上場株式であり、同様の扱いになります。

非上場株式の名義変更は、多くの場合、中小企業のオーナーや役員が自身の株式を子供などに贈与するケースが考えられます。上場株式と異なり、名義変更は証券会社ではなく、その株式を発行している企業で手続きを行う必要があります。

さらに、非上場株式には譲渡制限が設けられていることが多いため、贈与による名義変更も会社(発行企業)の承認を得る必要があります。手続きや費用については、会社によって異なるため、まずは発行会社に問い合わせるのが望ましいです。

名義変更に必要な書類

非上場株式の名義変更には、贈与契約書のほか、取締役会や株主総会の議事録が必要になることがあります。上場株式に比べて、手続きが複雑で時間がかかることが多いため、十分な準備が求められます。

名義変更時の税金と株式の評価方法

非上場株式の名義変更に伴って発生する可能性がある税金は、上場株式と同じく贈与税です。しかし、上場株式とは異なり、非上場株式の評価額は特有の方法で算定されます。

非上場株式の評価は、会社の総資産価額、従業員数、取引額などに基づいて、大会社・中会社・小会社に分類され、それぞれに応じた評価方法が用いられます。

  • 大会社: 類似業種比準方式で評価します。これは、類似業種の株価を基に、評価対象企業の「配当金額」「利益金額」「純資産価額」を比較して算定する方法です。
  • 小会社: 純資産価額方式で評価します。これは、会社の総資産から負債や法人税相当額を差し引いた金額で評価する方法です。
  • 中会社: 大会社と小会社の評価方法を組み合わせて評価します。

これらの評価方法は、贈与だけでなく相続の場合にも適用されます。また、事業承継に関しては、2018年から2027年までの間に行われたものについて、相続税や贈与税を全額猶予できる「特例事業承継税制」が利用できる場合もあります。

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上場株式を相続で名義変更する場合の手続き

名義変更の手続き内容

相続による上場株式の名義変更は、贈与の場合と同様に証券会社を通じて行いますが、手続きはより複雑です。相続手続きには、相続人全員の同意や必要書類の準備が必要で、贈与と比べて多くの時間がかかることがあります。

名義変更に必要な書類

相続による名義変更に必要な書類は以下の通りです(証券会社によって若干異なる場合があります):

  • 株式名義書換請求書
  • 取引口座引き継ぎの念書
  • 相続人全員の同意書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 亡くなった方の戸籍謄本(出生から死亡まで連続するもの)
  • 相続人の戸籍謄本および遺産分割協議書

これらの書類が揃うまでに時間がかかる場合があり、早めに手続きを進めることが重要です。

名義変更時にかかる税金と株式の評価方法

相続による名義変更でかかる可能性がある税金は相続税です。相続税は、相続財産の合計額が基礎控除(3,000万円+法定相続人1人あたり600万円)を超える場合に、亡くなってから10カ月以内に申告・納税が必要です。

上場株式の評価方法は贈与の場合とほぼ同じで、「課税時期」が「亡くなった日」に変更されます。評価額は以下の4つの中で最も低い価格が適用されます

  1. 亡くなった日の最終価格
  2. 亡くなった月の最終価格の月平均額
  3. 前月の最終価格の月平均額
  4. 前々月の最終価格の月平均額

非上場株式を相続で名義変更する場合の手続き

名義変更の手続き内容

非上場株式の名義変更も相続による場合、手続きは証券会社ではなく、株式を発行している企業に直接申し出る必要があります。発行企業の承認が必要である場合も多く、手続きは企業ごとに異なります。

名義変更に必要な書類

非上場株式の相続手続きに必要な書類は、上場株式の場合と同様に、以下の書類が一般的に必要です

  • 株式名義書換請求書
  • 取引口座引き継ぎの念書
  • 相続人全員の同意書
  • 相続人全員の印鑑証明書

加えて、発行企業によってはさらに書類が必要な場合もあるため、事前に発行企業に確認することが重要です。

名義変更時にかかる税金と株式の評価方法

非上場株式を相続した場合にかかる可能性がある税金は相続税です。評価方法は贈与の場合と同様で、会社の規模(大会社、中会社、小会社)に応じた評価方式が適用されます。また、一定の条件を満たす事業承継の場合には、「特例事業承継税制」により、相続税や贈与税の全額猶予が認められることがあります。

株式の名義変更時の注意点

株式の名義変更を行う際には、いくつかの重要な点に注意する必要があります。まず、認知症リスクが挙げられます。認知症になると、本人の意思確認ができないため、原則として生前の名義変更ができなくなります。これを避けるため、元気なうちに名義変更を検討しておくことが重要です。

次に、贈与税と相続税の申告期限にも気を配りましょう。名義変更自体に期限はありませんが、税金の申告と納税には期限があります。贈与税は贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに申告しなければなりません。相続税は、亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内に申告と納税が必要です。

また、亡くなった方が生前に株式などを売買していた場合は、準確定申告が必要になることもあります。これは、亡くなった人の所得税の確定申告で、亡くなってから4カ月以内に行わなければなりません。

弁護士 御厨

株式の名義変更は、贈与税や相続税の対象となるため、専門家のアドバイスを受けると安心です。上場株式の手続きは比較的簡単ですが、非上場株式の場合、評価方法や手続きが複雑になることが多いです。そのため、発行会社への問い合わせや、弁護士に相談することが推奨されます。
特に事業承継の場合、事業承継税制を利用できるかどうか、中小企業庁の支援策を活用できるかなどを検討する必要があります。早めに専門家に相談することで、スムーズな手続きを進めることができます。

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この記事を書いた人

弁護士|注力分野:相続

現在は立川の支店長弁護士として相続分野に注力して奮闘しております。今後も相談者の心に寄り添い、活動していく所存です。どのような法律問題でも、お気軽にご相談ください。

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