相続財産に不動産が含まれている時の問題と解決策

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相続財産の種類と不動産相続の問題点

相続財産にはさまざまな種類がありますが、その中でも金額的に大きな割合を占めるのが土地や建物といった不動産です。しかし、不動産の相続にはその性質上、以下のようなさまざまな問題が付きまといます。

当事務所に寄せられるご相談の中でも特に多いのが、

  • 「不動産を含む財産を相続人間でどのように分割すればよいのか話がまとまらない」
  • 「不動産の評価方法で揉めている」
  • 「不動産を売却して現金を分割したいが、一人の相続人が住み続けたいと言っている」

といったお悩みです。

ここでは、札幌市近郊で多くの相続手続きをサポートしてきた弁護士が、不動産が相続財産に含まれている場合に起こりやすい問題についてご説明します。

不動産相続の問題が起こりやすいケース

1. 相続人が多数いる場合

相続人の数が多いほど、相続は複雑化し、トラブルのリスクが高まります。特に不動産が相続財産に含まれている場合、法定相続だけでは解決が難しく、分割方法で話がまとまらないことが多いです。

さらに、相続人調査を行う中でこれまで知られていなかった相続人、例えば被相続人が認知していた子どもや、離婚した元配偶者との間の子が名乗り出てきた場合、それまでの遺産分割協議が白紙に戻ることもあります。

このような事態を避けるためには、被相続人が生前に遺言書を作成しておくことが有効です。特に再婚前の子など普段交流のない相続人がいる場合には、不動産を誰に取得させるかを明確にしておくことが重要です。

2. 相続が既に発生している場合

相続が発生している場合、相続人全員の戸籍の収集や所在の調査が必要となり、協議に入る前から躓く恐れがあります。面識のない相続人と連絡を取り合う煩わしさや、意見が対立する相続人との話し合いのストレスを感じる方も多くいます。

このような場合には、弁護士に依頼することで相続人およびその所在の調査や、相続人との協議を代行することが可能です。弁護士が介入することで、スムーズに遺産分割協議を進めることができます。

相続財産に不動産が含まれている場合の問題解決には、専門的な知識と経験が必要です。札幌市近郊で多数の相続問題を解決してきた当事務所の弁護士に、ぜひご相談ください。

不動産相続の問題事例

不動産の名義変更がなされていなかったケース

相続の場面では、不動産の名義が長年変更されていないケースがよく見られます。例えば、「父の死亡により相続が発生したが、父が住んでいた自宅建物の登記を確認すると、所有者が何十年も前に亡くなった祖父のままだった」ということがあります。

この場合、相続手続きを進めるにはまず祖父の相続人関係を整理しなければならず、戸籍謄本などの取得に時間と労力を要します。また、相続手続に参加する相続人が増えるため、トラブルが生じるリスクも高くなります。特に、古い戸籍を辿る必要があったり、父の兄弟姉妹が多人数である場合は、調査自体が困難です。このようなケースでは、相続手続に詳しい弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

相続した不動産を平等に分けたいと考えているケース

相続人同士が普段から円満な関係であっても、不動産が相続財産に含まれている場合、トラブルが発生することがあります。普段の関係が円満であるからこそ、互いに損をしないように平等な分割を目指すあまり、不動産が揉めごとのきっかけになることがあります。

不動産を平等に分割する方法には、①換価分割、②現物分割、③共有分割の三つが考えられます。

  1. 換価分割
    • 当該不動産を売却し、その売却金を相続人間で分割する方法です。金銭に換えることで分割が容易になるため、最も問題解決に適した方法と言えるでしょう。
  2. 現物分割
    • 土地を分筆し、分筆後の土地を各相続人が所有する方法です。一見、公平に見えますが、土地の方位や形状、接道部分の違いから、真の意味で同価値の分筆ができることは少なく、家が建っている土地では分筆が事実上困難です。
  3. 共有分割
    • 不動産を共有持分として分割する方法です。遺産分割協議が進まない場合に用いられることが多いですが、決して望ましい解決方法とは言えません。共有不動産は所有者全員の同意がないと変更行為ができず、共有者の関係が悪化すると不動産の活用が難しくなります。また、共有者が死亡し新たに相続が発生すると、さらに共有名義人が増え、処分がますます困難になります。

共有分割の方法を取ると、固定資産税の納付を巡るトラブルも生じます。共有不動産の固定資産税は、地方税法により共有者全員が連帯して納税義務を負いますが、自治体は納税通知書を代表者にのみ送付するため、代表者は他の共有者から負担分を徴収する手間が生じます。したがって、共有分割は相続の問題を先送りにする行為となりかねません。

終局的な解決を目指すなら換価分割が最適ですが、不動産の評価や売却に関する相続人間の意見の対立が生じることもよくあります。できるだけ円満に解決したいと考えている方は、弁護士を代理人として立てて冷静に話し合いに臨むことをお勧めします。

相続財産に不動産が含まれている場合の問題解決には、専門的な知識と経験が必要です。多数の相続問題を解決してきた当事務所の弁護士に、ぜひご相談ください。

不動産を相続すると遺族の中で不平等になってしまうケース

被相続人である親名義の家で同居していた相続人(子)がいる場合、被相続人の死亡後もその子が引き続き居住することが一般的です。この際、同居していた相続人が自宅の土地建物を単独で相続したいと強く希望することがあります。

しかし、自宅不動産に一定の価値があり、他に目ぼしい相続財産がない場合、他の相続人との間でトラブルが発生しやすい状況です。このようなケースでは、不動産を相続した人が他の相続人に代償金を支払う「代償分割」という方法を取ることが望ましいです。不動産の評価額は、代償分割時の時価が採用されることが多いです。

ただし、代償分割を実行するためには、不動産を取得する相続人が他の相続人に代償金を支払えるだけの資力が必要です。さらに、代償金の支払いを遺産分割協議書に明記しておかないと、代償金が贈与とみなされて贈与税が課される恐れがあります。

また、相続人間の同意があれば、不動産を代償金の代わりに渡すことも可能です。しかし、その場合も、代償金の支払いに代えた旨を遺産分割協議書に記載しておかないと、譲渡所得税が課される可能性があります。

被相続人の自宅しか財産がないケースは決して少なくありません。このような場合、一人の相続人が自宅を取得しようとすると、兄弟間で以下のような不満が生じることがあります。

例えば、「兄は親と実家で同居していたため、苦労していないのに、自分は家を出て住宅ローンを払い続けてきた。にもかかわらず、相続でも兄が得をし、自分が得るものがないのは不公平だ」といった不満が出ることが考えられます。このようなトラブルを未然に防ぎ、早期に解決を図るためには、弁護士に交渉を依頼することをお勧めします。

実家を相続できると誤解した相続人がいるケース

被相続人である親の世話や介護のために長年実家で同居してきた相続人(子)や、二世帯住宅を建てて親と同じ建物で暮らしてきた相続人(子)がいる場合、親が亡くなれば自分が実家の土地不動産を相続できると誤解していることがあります。しかし、相続人の一人が被相続人と一緒に暮らしていたからといって、その自宅不動産を当然に相続できるわけではありません。

被相続人への貢献を相続に反映させるためには、寄与分の制度を利用しなければなりません。寄与分とは、共同相続人の中で、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした相続人の相続分を増やし、相続人間の公平を図る制度です。

例えば、被相続人である親と生前同居し、無償で被相続人の介護をしていた相続人(子)は、同等の介護サービスを利用する費用分だけ被相続人の財産維持に貢献したといえ、寄与分が認められる可能性があります。しかし、寄与分を受ける権利がある相続人が法定相続分を超えて被相続人の自宅不動産の相続を主張すると、他の相続人との間で認識の食い違いやトラブルが生じる恐れがあります。

従来、寄与分を受けることができる者(寄与分権者)は相続人に限定されていましたが、2020(令和2)年7月1日以降に開始した相続については、法定相続人でない親族(配偶者のほか、六親等内の血族、三親等内の姻族)も特別寄与料の請求が認められるようになりました。特別寄与者は相続人ではないため遺産分割協議には参加できませんが、特別寄与料を考慮した遺産分割協議を進めることが重要です。

長年、被相続人の介護をしてきた相続人や親族は、「一切無関係で過ごしてきた兄弟姉妹と同額の財産を取得するのでは納得がいかない」と考えるのは自然なことです。寄与分を巡るトラブルを避けるためには、被相続人が生前に、介護してくれた人やその家族に感謝する気持ちを相続に反映させるように遺言書を作成しておくことが有効です。

遺言書がないまま相続が開始してしまった場合に寄与分を反映した遺産分割を希望しても、寄与分の評価方法については事案によって様々であり、協議で結論が出ないことも多いです。協議がこじれた場合、家庭裁判所への調停申立てなど法的手続きへの移行を検討しなければなりません。早期に解決を図るためには、弁護士に相談することをお勧めします。

配偶者が自宅に住み続けるケース

被相続人と同居していたのが子ではなく配偶者である場合も、自宅不動産を当然に相続できるわけではありません。そのため、自宅に配偶者の法定相続分以上の価値があると、他の相続人とトラブルになる可能性があります。

さらに、被相続人の配偶者が自宅を取得できたとしても、その他の現金・預金を他の相続人が相続したり、代償分割により代償金を支払う必要が出てきたりした場合、相続開始時に高齢になっている配偶者の生活費が確保できなくなるという問題も生じます。

この問題に対応するため、2020(令和2)年4月1日以降に開始した相続について、民法の改正により配偶者居住権という制度が新設されました。配偶者居住権は、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物に対して、終身または一定の期間、無償で使用を認めるものです。これにより、相続財産である居住建物の価値を、「配偶者居住権の価値」と「配偶者居住権の負担付きの所有権の価値」に分けて考えることができるようになりました。

配偶者には居住建物全体の価値のうち、「配偶者居住権の価値」分のみを相続させることで、現金・預金といった他の相続財産を取得する機会を増やすことができます。

ただし、配偶者居住権は遺言を残してもらうこと、または他の相続人との遺産分割手続きを経ることで認められる権利です。配偶者居住権の価格の評価・計算方法には複雑な部分があるため、遺言書がない場合の協議がこじれてしまう原因にもなりかねません。被相続人名義の建物での居住を希望する配偶者が相続人に含まれている場合は、一度弁護士にご相談ください。

相続不動産の解決のポイント

相続不動産のトラブルを解決するためのポイントを3つご紹介します。

共有はできるだけ避けること

一般的な家庭では、遺産は自宅と少しの預貯金が大半を占めます。現金は簡単に分けられますが、自宅などの不動産は物理的に分割が難しいため、共有という形を選ぶ人も少なくありません。しかし、不動産の共有には多くの制約があります。例えば、家の建て替えや一括売却の際には共有者全員の同意が必要です。また、すべての共有者に使用権があるため、使い方を巡ってトラブルが発生することもあります。さらに、共有者が亡くなると、その人の相続人が新たな共有者となり、関係者が増えることで、売却などの手続きが進まなくなる可能性があります。

代償分割を検討する

不動産の分割を考える際には、代償分割という方法があります。代償分割とは、相続人の一人(または複数人)が遺産を取得し、その代わりに他の相続人に相応の代償金を支払う方法です。この方法は、不動産や分割しにくい財産、または分割することで困る自社株式などの財産が多い場合に有効です。ただし、代償金を支払うための資金が必要ですので、被相続人の生命保険金を活用して代償資金を用意するなどの生前対策が求められます。

換価分割で現金化して分ける

共有を避けたいし、代償分割に必要な資金もない場合、さらに特に家を継ぐ必要がない場合には、換価分割を検討しましょう。換価分割とは、遺産を売却して現金にし、その現金を相続人同士で分ける方法です。現金にすることで、きれいに分けられるのが利点です。ただし、売却によって譲渡所得(売却益)が発生するため、譲渡所得税や住民税の課税対象となります。また、不動産の売却には登記や仲介費用、株式の売却には手数料がかかるため、予想以上に手取りの金額が少なくなることもあります。居住用財産の譲渡所得については、3,000万円までが非課税となる特例がありますが、適用には条件がありますので、空き家の譲渡所得の特別控除が適用できないかも検討し、税負担を減らすようにしましょう。

弁護士や専門家のサポートを活用する

相続不動産に関するトラブルを解決するためには、弁護士や相続の専門家のサポートを受けることが非常に有効です。専門家は法律的な知識や経験を持っているため、適切なアドバイスを提供し、相続人間の調整役としても活躍します。特に、相続人同士の対立が深刻化している場合には、弁護士に依頼することで、冷静かつ公正な解決を図ることができます。

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この記事を書いた人

弁護士|注力分野:相続

現在は立川の支店長弁護士として相続分野に注力して奮闘しております。今後も相談者の心に寄り添い、活動していく所存です。どのような法律問題でも、お気軽にご相談ください。

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