「親子間の相続トラブル」について弁護士が解説

親子間の相続トラブルは、単なる財産の問題だけでなく、感情的な衝突を引き起こしやすいものです。血縁関係が深いため、話し合いがこじれることも多く、複雑な状況に発展することがあります。

「何を、どうやって伝えればいいのか分からない」 「親子だからこそ、言いにくいことがある」

と感じている方も少なくないでしょう。

たとえば、父親が亡くなり、母親が相続の対象である実家に住んでいるケースでは、母親が実家に住み続けたい一方で、子どもが実家を売却して現金を手にしたいと考えるなど、相続を巡って対立が生じることがあります。また、親が認知症などで判断能力が低下している場合、不動産の管理や売却に関してさまざまな問題が発生することもあります。

目次

当事務所に寄せられた実際の相談事例

・疎遠や絶縁状態であった親の財産を相続したくない
・父親が亡くなり、母親は自宅に住み続けたいが、子どもは家を売却したいと考えている
・長男が全財産を相続するという遺言があったが、生活費が不安な母親が遺留分の請求を行った

こういったケースが生じた場合、どのように対処すべきか迷われる方も多いでしょう。当事務所の弁護士が、その解決方法について詳しくご説明します。

絶縁状態の親子間での相続

「勘当」や「絶縁」されていても、法律上の親子関係が消滅するわけではありません。「相続欠格」や「相続廃除」といった特別な状況に該当しない限り、親子には相続権が存在します。親子関係は、特別養子縁組などの例外を除いて、法的に解消することはできないのが原則です。

特定の相続人に遺産を相続させない方法

親子関係が続いている限り、「縁を切る」ことはできませんが、遺言書を作成することで特定の相続人に遺産を相続させない方法は存在します。例えば、疎遠だった子どもに相続させないという内容を遺言で指定することは可能です。しかし、この場合でも、その子どもが遺留分を請求する権利があり、遺留分侵害額請求を受けるリスクがあります。

財産を第三者に生前贈与する方法

遺贈や死因贈与を利用して、すべての財産を第三者に贈与することで、本来相続するべき財産を特定の相続人に渡らないようにすることができます。これにより、希望する相手に財産を移すことが可能です。

ただし、この方法でも、子どもには最低限の相続財産を受け取る権利(遺留分)が法律で保証されています。もし子どもが遺留分の権利を主張して「遺留分侵害額請求」を行った場合、遺留分に相当する金額を支払わなければならない可能性がある点には注意が必要です。

遺留分の放棄について

遺留分侵害の問題に対しては、「遺留分の放棄」という手段で対応することが考えられます。遺留分の放棄とは、遺留分を持つ相続人がその権利を自ら手放すことを指します。言葉が似ているため「相続放棄」と混同されがちですが、遺留分の放棄は「相続放棄」とは異なります。遺留分の放棄は、遺留分に関する権利を放棄するだけであり、相続権自体は維持されます。

ただし、もし相続財産に借金があった場合、遺留分を放棄してもその返済義務が生じる可能性があるため、必要に応じて相続放棄の手続きを行うことを忘れないようにしましょう。

遺留分の放棄手続き

被相続人が生前に遺留分を放棄させるためには、家庭裁判所から「遺留分放棄の許可」を得る必要があります。これは、生前に被相続人が遺留分権利者に対して不当な圧力をかける可能性があるため、厳密な手続きが求められるのです。許可は簡単に下りるわけではなく、慎重に審査されます。

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親子間の不動産トラブルについて

不動産のように「分けられない資産」や「評価が難しい資産」が相続に含まれる場合、相続トラブルが発生しやすくなります。典型的なケースは、父親が亡くなり、母親が住み続けたい家を、子どもが売却して法定相続分どおりに分けたいという状況です。さらに、母親が不動産を相続する一方で、子どもが預貯金を相続した場合、母親が生活費として期待していた預貯金を受け取れず、生活に困ることもあります。この結果、母親は住み慣れた自宅を手放さざるを得ない状況に追い込まれることもあります。

こうした不合理な事態を避けるため、民法の改正により「配偶者居住権」が導入されました。

配偶者居住権とは

相続法改正により認められた配偶者居住権には、「短期居住権」と「長期居住権」があります。

短期居住権は、被相続人が所有していた建物に無償で住んでいた配偶者が、相続人の遺産分割協議が終わるまで、引き続きその建物に無償で住むことができる権利です。

長期居住権は、他の相続人が建物を相続財産として取得した場合でも、配偶者が亡くなるまで、または一定期間、その建物に住み続ける権利を保証するものです。

従来の民法では、配偶者が不動産を相続すると他の資産(預貯金など)を相続できないことが多く見られましたが、長期配偶者居住権の導入により、配偶者は引き続き自宅に住みながら預貯金の一部を相続できるようになりました。

配偶者居住権の登記が必要
配偶者居住権を設定した場合、その旨を登記することが義務付けられています(新民法第1031条1項)。これは、不動産の「使用・収益の権利」が長期間制約されるため、第三者にもその事実を公示する必要があるからです。

配偶者居住権の設定による不動産の評価低下

配偶者居住権は所有権を制限する権利であり、「使用・収益の権利」を大きく制約するため、不動産の経済的な価値が低下します。これにより、不動産全体の評価額も下がる可能性があります。

相続に関する弁護士相談の重要性

親子間でトラブルがある場合や、相続財産の分割が難しいケースでは、相続人同士の関係が悪化し、遺産分割協議が進まないことがあります。こうした場合には、弁護士に相談することで、公平で法的根拠に基づいた解決策を早期に提示してもらうことが、相続人同士の関係を保つためにも有効です。

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