皆さま、不動産相続についてお考えになったことはございますか?
特に、ご両親が不動産を所有されている場合、その将来について不安を感じる方も多いことでしょう。
不動産の相続トラブルは、決して他人事ではありません。一度トラブルが発生すると、その解決には想像以上の時間と労力を要することがあります。このような事態を避けるためには、事前の対策が重要です。
このページでは、不動産相続においてよく見られるトラブルの事例とその解決策についてご紹介いたします。
よくある遺産分割トラブル
同居の相続人と他の相続人間での意見の対立
例えば、相続人の中に生前ご両親と長年同居されていた方がいらっしゃる場合、その方は長年の貢献を理由に、実家の不動産を相続したいと考えるかもしれません。一方で、他の相続人との間で意見が対立することがあり、トラブルに発展することも少なくありません。
特別寄与料の請求
被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした親族(六親等内の血族・配偶者・三親等内の姻族)であれば、民法により特別寄与料を請求することができます。また、特別寄与料は法定相続人でない親族も対象となるため、介護を行っていた親族が不動産の相続を主張することも可能です。
ご両親が介護してくれた方に対して特別な感謝の気持ちを持っている場合、それを反映させるためには、生前に遺言書を作成することをおすすめします。
相続人同士のトラブル防止のための遺言書の活用
不動産の平等分割を考える場合
相続人同士で平等に分割することを考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、不動産の場合、平等分割がかえって揉め事を引き起こすこともあります。不動産を平等に分割するには、大きく分けて3つの方法があります。
共有分割とは
一つの土地を複数の相続人の共有名義にする方法です。例えば、4人兄弟が共有する場合、それぞれの持分は4分の1ずつになります。
ただし、この方法にはデメリットもあります。たとえば、売却や建築には全ての所有者の同意が必要となり、世代が進むごとに共有者が増えて土地の活用が難しくなる可能性があります。
表面的には簡単な解決方法に見える共有分割ですが、こうしたデメリットを考慮すると、必ずしも最良の方法とは言えません。
このように、不動産相続には多くの注意点が存在します。事前に適切な対策を講じ、トラブルを未然に防ぐことが大切です。
代償分割とは
代償分割とは、相続財産の一部(不動産など)または全てを特定の相続人が取得し、その代わりに他の相続人に対して代償金を支払う分割方法です。
例)被相続人の法定相続人が配偶者と娘A、娘Bの計3人の場合
- 配偶者は、被相続人が所有していた自宅に住み続けたいと考えています。
- 一方、娘Aと娘Bは、不動産を売却して現金化することを希望しています。
このような状況では、現物分割や換価分割での遺産分割が困難になることがあります。そこで、配偶者が自宅を相続し、その代わりに娘Aと娘Bに代償金を支払うことで遺産分割を行う方法を「代償分割」といいます。
換価分割とは
換価分割は、相続財産の一部(不動産や有価証券など)または全てを売却し、得た現金を相続人で分割する方法です。
換価分割の注意点
換価分割を行う際には、まず被相続人名義のままでは財産の売却ができないため、財産の名義変更を行う必要があります。その後、売却によって得た現金を相続分に応じて相続人に分配します。
不動産相続の際の注意点
不動産を相続しようとした際に、前の世代の名義のまま放置されているケースが実際によく見られます。遺産分割協議書を作成し、不動産関係の書類を取り寄せたところ、名義人が何世代も前のままだったことが発覚することがあります。不動産の名義変更は義務ではなく、期限もないため、そのまま放置されているケースが多いのです。
この場合、手続きには非常に手間と時間がかかります。当時の被相続人が亡くなった際の遺産分割協議書が見つかれば良いですが、無い場合には再度、遺産分割協議書を作成し、登記関係書類の準備が必要です。その後、全ての相続人に遺産分割協議書へ署名・捺印を依頼する必要があります。
そのため、相続に備えて生前から土地の登記状況を把握し、必要に応じて対応しておくことが重要です。まずは法務局で不動産に関する情報(名義など)を確認し、必要があれば対策を講じましょう。
相続した不動産を空き家として放置しないために
ご両親が亡くなり、実家が空き家になるケースでは、相続人全員の意向が一致しないと相続手続きや売却手続きが進まないことがあります。しかし、思い出のある実家を残したいと考える相続人がいる場合、空き家のまま放置されると老朽化や周囲への悪影響、維持費の問題が発生することがあります。
こうしたトラブルを避けるためには、ご両親が亡くなった際にどうするかを事前に話し合っておくことが大切です。
- ご家族が住む場合
- ご家族で維持管理をする
- 管理会社に管理を委託する
- 賃貸に出す
- 売却する
など、さまざまな選択肢があります。特にご家族が住まない場合は、賃貸などで有効活用することをおすすめします。事前に決めておくことで、空き家のリスクを防ぐことができます。
不動産相続に向けた準備の重要性
不動産の相続には多くの注意点が存在します。遺言書を作成し、将来の相続人となる方々と事前に話し合うことで、スムーズな相続が可能になります。
まずは、相続財産を把握し、相続人とも早めに話し合いを検討しましょう。