軍用地の相続で知っておくべき9つのポイントを弁護士が解説!

軍用地の相続は、通常の不動産相続とは異なり、特有の法的手続きが必要です。この記事では、軍用地を相続する際に押さえておくべき基本的なポイントから、相続手続きの流れまでをわかりやすく解説します。相続に関するトラブルを避け、スムーズに手続きを進めるためのアドバイスもご紹介しますので、軍用地を相続する予定の方や、すでに手続きを進めている方は必見です。

目次

軍用地とは何か?

軍用地とは、政府が米軍や自衛隊に貸し出している土地のことを指します。実質的には、国が個人から土地を借りる形になっており、軍用地を所有していると毎年日本政府(防衛局)から「軍用地料」が支払われます。この支払いは通常、7月末頃に行われます。多くの場合、軍用地の所有者は「軍用地地主会」に加入し、防衛局から地主会を通じて軍用地料が支払われる仕組みとなっています。なお、地主会の会費が差し引かれた金額が、最終的に所有者に振り込まれます。

相続財産が土地のみの場合の遺産分割協議の難しさ

不動産以外の相続財産が少ない場合、遺産分割協議が円滑に進まないことがあります。特に、相続財産に軍用地が含まれていると、その傾向がさらに顕著です。相続人が複数いる場合、一筆の土地をどのように分割するかが大きな課題となり、他に目ぼしい相続財産が少ない場合、合意に達するのが難しくなります。以下では、軍用地が相続財産に含まれる場合の分割方法について詳しく説明します。

一般的な土地の遺産分割方法は4つあります

土地の遺産分割には、「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」という4つの方法が一般的に使われます。

現物分割

「現物分割」とは、相続する土地を分筆し、それぞれの相続人がその分割された土地を取得する方法です。この方法のメリットは、被相続人の土地をそのまま相続人に継承でき、代償金を支払う資力が不要な点です。しかし、分筆には手間や時間がかかる上、土地が小さくなることで建築制限が生じたり、売却が難しくなる可能性があるというデメリットもあります。

代償分割

「代償分割」とは、特定の相続人が土地を相続し、他の相続人に対してその相続分に相当する現金を渡す方法です。これにより、土地をそのまま次の世代に引き継ぐことができますが、土地を相続する側に十分な資力が必要であり、土地の評価額を巡って相続人同士で争いが起こる可能性があります。

換価分割

「換価分割」とは、土地を売却し、その売却代金を相続人で分ける方法です。資力がなくても土地を分割でき、評価額について争いが起きにくいのが利点です。しかし、被相続人の大切な土地を次世代に残すことができなくなり、売却までに時間や手間がかかる場合や、そもそも売れないリスクがあるというデメリットがあります。

共有分割

「共有分割」とは、一つの土地を複数の相続人が共有名義で相続する方法です。この方法は、土地の分筆や売却の手間が不要で、資力がなくても実現可能です。しかし、不動産の共有名義では売却時に全員の同意が必要で、代が進むにつれて共有者が増え、権利関係が複雑化するため、あまり推奨されません。

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軍用地の分割方法はどうすべきか?

軍用地は、毎年一定額の軍用地料を受け取れるという利点がありますが、換価分割で売却してしまうと、将来の地料を受け取れなくなるため、もったいないと感じる相続人も多いでしょう。軍用地を一人が相続し、他の相続人に相応の現金を渡す「代償分割」の方法を取る場合、相続人に十分な資力が必要です。

軍用地の市場価額は立地によりますが、年間地料の40倍から60倍程度と言われており、これにより土地の評価が高くなると、代償金も大きくなります。その結果、代償分割が難航し、評価や代償金額を巡って相続人間で争いが長引くケースも少なくありません。

相続人名義にしないままにしておくリスク

相続人の中に代償金を支払う資力がない場合、遺産分割協議を後回しにし、被相続人の名義のまま軍用地を残しておくことがあります。この場合、地主会に相続人代表者(借地料受領者)を届け出て、その受領者が毎年他の相続人に借地料を分配する方法を取ることが考えられます。しかし、この方法が将来的に問題なく続けられるかは不透明です。加えて、借地料の分配過程でトラブルが発生したり、受領者が借地料を使い込んでしまう可能性も否定できません。

さらに、2024年4月から施行される改正不動産登記法により、被相続人の死亡後3年以上相続登記が行われない場合、10万円以下の過料が科せられることになります。

軍用地の共有分割は有効か?

軍用地を相続人全員の共有名義で登記することで、改正不動産登記法による過料の対象からは免れますが、借地料は地主会に届け出た代表者に全額振り込まれるため、分配過程でトラブルが起きる可能性は依然として残ります。さらに、相続人の代では問題なくとも、子や孫の代になると共有者が増え、トラブルが拡大するリスクがあります。また、共有者の一人がまとまった資金を必要としても、全員の同意なしには土地を売却することができません。これらの理由から、軍用地を共有のまま相続するのは推奨できません。

一定の広さの軍用地なら、分筆して現物分割を

軍用地が一定の広さ(借地料)以上であれば、分筆してそれぞれの相続人が独立して借地料を受け取る方法をお勧めします。一般の土地と異なり、軍用地は自ら利用するものではなく、安定した賃借料を得るための手段です。したがって、分筆によって土地が狭くなるデメリットはほとんどありません。

相続開始後の分筆前に生じた借地料は誰のものか?

最高裁判所の判例(2005年9月8日)によれば、相続開始後から遺産分割前に生じた借地料(果実)は、遺産とは別個の財産と見なされ、各相続人がその相続分に応じて取得します。ただし、相続人全員の合意があれば、これを遺産分割の対象に含めることも可能です。例えば、相続開始後に100万円の賃借料が支払われていた場合、全員が同意すれば、その100万円を遺産に加え、分割対象とすることができます。

軍用地相続において弁護士に依頼するメリット

軍用地相続には、特別受益や寄与分、特別寄与料の有無が争点となる場合が多くあります。また、借地料が少ない場合や、軍用地を単独で相続したい相続人が資力を持つ場合、代償分割を選ぶこともありますが、その際の軍用地評価を巡る争いが生じることもあります。

弁護士に依頼することで、自身に有利な点、不利な点を正確に把握し、有利に遺産分割協議(調停)を進めることができます。また、感情的な対立によって協議が進まない場合でも、弁護士が介入することで冷静な判断を促し、精神的負担を軽減することが可能です。さらに、経験豊富な弁護士は、負債処理や祭祀承継(トートーメー)の費用捻出のため、未分割の借地料を活用するなどの提案も行います。

なお、相続税の申告や分筆登記、相続登記については弁護士が対応できませんが、弁護士法人琉球法律事務所では提携する税理士や司法書士、土地家屋調査士を紹介することが可能です。お客様の希望に沿った対応を事前に相談し、費用の見積もりも弁護士から手配いたします。軍用地の遺産分割に関する豊富な実績を持つ当事務所にお任せください。

弁護士 御厨

遺産分割調停の過程で、軍用地の分筆を決定し、土地家屋調査士や司法書士をご紹介して分筆登記や相続登記を完了させた事例があります。また、法務局に供託された借地料の払渡し請求を代行し、その借地料を相続人の負債や遺産分割前の固定資産税の支払い、さらには分筆や登記にかかる費用に充てたケースもございます。相続、特に軍用地を含む相続については、ぜひ弁護士法人琉球法律事務所にご相談ください。

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この記事を書いた人

弁護士|注力分野:相続

現在は立川の支店長弁護士として相続分野に注力して奮闘しております。今後も相談者の心に寄り添い、活動していく所存です。どのような法律問題でも、お気軽にご相談ください。

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