借金も相続の対象になる
もし亡くなった方に借金があった場合、その借金は相続人が引き継ぐことになります。相続した借金は、相続人自身が返済しなければなりません。
「借金を相続したかもしれない」と心当たりがある場合は、負債をしっかりと把握するために正確な方法で調査することが重要です。信用情報機関への開示請求を利用するのが有効な手段です。また、郵便受けや自宅内の各所、通帳の記帳内容なども確認することが必要です。
相続の対象となる借金
次のような借金や負債はすべて相続の対象となります。
- 消費者金融、クレジットカード、カードローンの負債(これには一括払い、分割払い、リボ払い、ショッピング、キャッシングが含まれます)
- 事業用のローンや融資の残債
- 個人からの借金
- 滞納している家賃
- 未払いの水道光熱費
- 未払いの通信料やスマホ代
- 滞納している税金
- 連帯保証債務
相続人として、これらの借金が残されていないか慎重に確認することが求められます。ただし、被相続人が特定の負債を抱えていた場合、それらは通常支払いが免除されます。
- 住宅ローン: 団体信用生命保険により完済されます。
- 奨学金(日本学生支援機構): 本人が死亡した場合、日本学生支援機構に申請することで返済が免除されます。
相続放棄による借金の免除
もし負債を相続したくない場合は、相続放棄を検討することができます。相続放棄を行うと、その人は「最初から相続人ではなかった」ものとされ、借金を含む一切の相続を回避できます。
ただし、相続放棄には期限があるため注意が必要です。基本的には「相続が開始したことを知ってから3カ月以内」に、家庭裁判所で「相続放棄の申述」を行う必要があります。この期限を過ぎると、借金を相続せざるを得なくなる可能性が高くなるため、心当たりがある場合は早急に手続きを進めることをお勧めします。
消費者金融、クレジットカードやローンなどの調べ方
借金や負債の種類に応じた調査方法についてご紹介します。まずは、消費者金融、クレジットカード、カードローンといった消費者向けローンの調べ方について見ていきましょう。
信用情報機関への情報開示請求
消費者向けローンに関する情報を正確に把握するためには、「信用情報機関」に情報開示を請求するのが効果的です。
信用情報機関は、個人のローンやクレジットの利用履歴を登録している専門機関であり、どの金融機関や貸金業者からどれだけの借り入れをしているかを詳細に管理しています。相続人は被相続人の信用情報を取得することができるため、借金の状況を確認したい場合は、必ず情報開示を申請しましょう。
信用情報機関には、以下の3つの主要機関があります。これらすべてに対して情報開示請求を行うことが推奨されます。
- JICC: 郵送、アプリ、または窓口申請で情報開示が可能です。郵送やアプリで申請すると、10日前後で開示書類が届きます。
- CIC: 郵送、WEB申請、窓口申請で情報開示が可能です。郵送の場合は10日前後で開示書類が届き、WEB申請の場合は即時に閲覧が可能です。
- KSC: 郵送のみで情報開示申請を受け付けています。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響で、JICCやCICの窓口申請が制限されている可能性がありますので、事前に確認することをお勧めします。
必要書類: 信用情報の請求には以下の書類が必要です。
- 開示請求の申請書
- 相続関係を証明する戸籍謄本類
- 被相続人の除籍謄本や住民票除票
- 相続関係説明図
- 申請者の本人確認書類
自宅内の調査
信用情報機関での調査だけでは、すべての借り入れ状況を把握できるとは限りません。漏れを防ぐために、自宅内に以下のような資料が残っていないか確認することも重要です。
- 契約書控え(金銭消費貸借契約書、借用書、カード利用約款など)
- 通帳の引き落とし内容(カードローンの引き落とし記録など)
- 振込証明書
- 督促状や内容証明郵便、裁判所からの書類(滞納した場合に自宅に届くもの)
これらの資料をしっかりと確認し、見落としがないようにしましょう。
個人の借金や滞納税、滞納公共料金の調べ方
個人からの借金や滞納税、公共料金、スマホ代などの未払い分については、信用情報には記載されていないため、別の方法で確認する必要があります。
自宅内の調査
まずは自宅内に以下のようなものが残されていないか確認しましょう。
- 契約書(金銭消費貸借契約書、借用証、賃貸借契約書など)
- 請求書や督促状(滞納している場合、国や自治体、電力会社などの債権者から送付される請求書)
- 手帳の記録(借り入れや滞納について本人が手帳に記録している場合もあります)
郵便受けの確認
借金や負債の調査を行う際には、郵便受けを必ず確認しましょう。支払いが延滞した場合、多くの債権者が督促状を郵送してきますので、重要な情報が見逃されないように注意が必要です。
留守電の確認
被相続人の携帯電話に督促の電話がかかってくることも多々あります。留守電に残されたメッセージも確認して、見逃しがないようにしましょう。
連帯保証債務に要注意
特に被相続人が事業を営んでいた場合、連帯保証債務の有無には注意が必要です。
連帯保証債務の場合、主債務者が返済を続けている限り、保証人には督促が届きません。そのため、保証人が実際に支払いを行うことは通常ありませんが、相続人が負債の存在に気づく機会がないため、見過ごされることが多くあります。
しかし、主債務者が返済を停止すると、相続人に対して莫大な請求が発生する可能性があり、相続人たちは突然の負担に直面することになります。
被相続人が法人を経営していた場合、会社の負債を保証している可能性が高いです。また、知人の経営者の保証人になっているケースも少なくありません。会社関係の書類も含めて確認し、連帯保証債務がないか注意深く調査しましょう。
借金の調査はケースごとに異なり、非常に手間のかかる作業です。正確に行わないと、見落としが発生し、結果的に借金を強制的に相続させられるリスクが高まります。また、相続放棄には期限があるため、迅速な対応が求められます。自分たちだけで対応する場合、不安が残ることも少なくありません。
確実かつ安全に借金や負債の相続を回避したい方は、弁護士などの専門家に相談することを強くお勧めします。