事実婚における遺産相続の権利と配分方法を、弁護士が解説!

事実婚のパートナーには相続権があるのでしょうか?また、相続権がない場合、どのようにしてパートナーに資産を遺すことができるのでしょうか?事実婚の遺産相続について詳しく解説します。法的権利や遺産の受け取り方、手続きのポイントを押さえ、パートナーを守るための準備を整えましょう。

目次

事実婚とは

事実婚の夫婦とは、法律上の婚姻届を提出していないものの、実質的に夫婦として共同生活を営んでいる関係を指します。法律婚ではないため、民法上の相続権が認められない内縁関係ですが、各自治体で「世帯主との続柄」に「夫(未届)」「妻(未届)」と記載する手続きが整備されるなど、一部の権利は付与されています。

しかしながら、民法上の相続人の範囲は以下の通りです

配偶者は常に相続人となり、他に相続人がいる場合、次の順序で配偶者と共に相続人になります。

  • 第1順位:死亡した人の子ども
  • 第2順位:死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
  • 第3順位:死亡した人の兄弟姉妹

この法定相続人には内縁関係のパートナーは含まれないため、事実婚の夫婦は相続権を持たないのです。長年の共同生活で財産を築いていたとしても、法的に遺産を受け取る権利はありません。

また、被相続人の介護や生活支援に貢献してきた親族は「特別寄与分」を主張できる制度があります。例えば、被相続人の息子の妻が介護に従事していた場合、この貢献に対して相続時に財産を請求する権利があります。しかし、この制度を利用できるのは親族に限られており、内縁関係のパートナーには適用されません。

事実婚のパートナーに「相続権はない」が原則

事実婚のパートナーには、原則として遺産相続権がありません。遺産を相続するには民法で定められた法定相続人に該当する必要がありますが、法定相続人になれるのは法律上の配偶者や、子供・直系尊属・兄弟姉妹のみです。また、国税庁の「相続人の範囲と法定相続分」には、「内縁関係の人は相続人に含まれません」と記載されています。そのため、事実婚のパートナーには、相続権がないことを理解しておく必要があります。

事実婚の子供に関する相続権

事実婚カップルに子供がいる場合、父親が認知していれば子供は法定相続人として遺産を相続する権利を持ちます。認知が行われていない場合、法的には親子関係がないとされるため、子供も相続権を持ちません。

事実婚のパートナーに財産を渡す5つの方法

事実婚のパートナーに財産を渡すための方法として、以下の5つがあります。

生前贈与

生前贈与は、年間110万円までの贈与であれば贈与税がかからず、事実婚のパートナーにも自由に財産を渡せる方法です。

遺言書での遺贈

遺言書に「事実婚のパートナーに遺産を遺す」旨を記載することで、遺産を渡すことが可能です。ただし、法定相続人の遺留分に配慮が必要です。

生命保険の受取人に指定

生命保険の受取人として事実婚のパートナーを指定すれば、財産を渡すことが可能です。ただし、生命保険の非課税枠は適用されず、全額が課税対象となります。

特別縁故者としての申し立て

法定相続人がいない場合、家庭裁判所に申し立てを行い、特別縁故者として認められれば遺産を取得できる可能性があります。ただし、裁判所の判断によるため、受け取れる遺産額に制限があります。

婚姻して配偶者になる

事実婚から婚姻関係に移行すれば、法律上の配偶者として相続権を持つことができます。

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事実婚のパートナーに財産を渡す前に知っておくべき5つの注意点

事実婚のパートナーに財産を渡す際には、相続税や特例に関するいくつかの注意点があります。

相続税が2割加算される

事実婚のパートナーが遺産を受け取る場合、相続税額が通常より2割加算されます。これは法定相続人でない場合に適用され、事実婚パートナーは対象外となるためです。

配偶者控除が適用されない

配偶者控除とは、法律上の配偶者に適用される相続税の軽減措置で、1億6,000万円または法定相続分の高い方の金額が非課税となる制度です。事実婚のパートナーにはこの特例が適用されません。

障害者控除が適用されない

相続人が障害者であれば、85歳に到達するまでの年数に応じて相続税の控除が認められますが、事実婚のパートナーは相続人として認められないため、障害者控除も適用外です。

小規模宅地等の特例が適用されない

小規模宅地等の特例は、同居していた自宅や事業用土地の評価額を減額する制度ですが、対象は法定相続人のみです。したがって、事実婚のパートナーが自宅などの土地を相続しても、この特例は適用されず、相続税が高くなる場合があります。

寄与分や特別寄与料が認められない

寄与分は、被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人がより多くの相続財産を得る制度です。また、特別寄与料は相続人以外の親族に対して認められる寄与に関する制度ですが、事実婚のパートナーはどちらも適用されません。

弁護士 御厨

「事実婚のパートナーに相続権はあるのか?もし相続権がないなら、どのようにして財産を残せば良いのか?」といった疑問を持つ方に向け、事実婚と相続について解説しました。事実婚の遺産相続について、不安な点がございましたら、弊所までお問い合わせください!

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この記事を書いた人

弁護士|注力分野:相続

現在は立川の支店長弁護士として相続分野に注力して奮闘しております。今後も相談者の心に寄り添い、活動していく所存です。どのような法律問題でも、お気軽にご相談ください。

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