遺言書の効力を徹底理解!有効な遺言を作成するための方法を弁護士が解説

親が亡くなった際に「すべての財産を特定の相続人に渡す」といった不公平に感じる遺言書が見つかると、「本当に本物なのか?」と疑念を抱くこともあるでしょう。実際に遺言書が「無効」とされるケースは少なくありません。遺言の効力がどのように認められるか、有効になるための条件、そして意図に反する遺言書が見つかった場合の対処法について、専門家が詳しく解説します。

目次

遺言書でできることとは?

まず、遺言書にどのような効力があるのか、確認しておきましょう。
遺言書を通じて「相続方法」を指定することができ、法定相続分と異なる割合での分配や、特定の遺産を相続人やその他の方に引き継がせることが可能です。これは、法律で「遺言によって指定された相続方法は法定相続に優先する」と定められているためです。
遺言書があれば、相続の割合を調整したり、遺産の分配方法を指定することができます。具体的には、以下のような項目を指定することができます。

特定の相続人に多くの遺産を譲る

複数の相続人がいる場合、特定の相続人に多くの遺産を渡したいと考えることもあるでしょう。遺言書があれば、例えば長女や長男といった特定の相続人に財産の大部分を譲ることが可能です。

相続人でない人に遺産を遺贈する

内縁の妻や孫、または特にお世話になった方など、相続人ではない人に遺産を渡したい場合もあります。遺言書を使えば、相続人以外の方に「遺贈」することが可能です。

遺産を寄付する

相続人がいない場合や、特定の団体に財産を寄付したい場合も遺言書が役立ちます。法人や慈善団体への寄付を指定することができます。

子どもの認知

遺言書では、財産の分配以外に身分行為も可能です。たとえば、未婚の相手との子どもを遺言で認知することができます。これにより、死後に子どもを認知することができ、将来的なトラブルの回避に役立ちます。

相続人の廃除(相続権の消失)

虐待や侮辱などの理由で特定の相続人に財産を渡したくない場合、遺言書により相続権を失わせることができます。

遺産分割方法の指定・分割の禁止

遺産分割の方法を指定したり、分割の禁止を指定することも可能です。相続開始から5年以内であれば、分割を禁止して冷却期間を設けることもできます。

後見人の指定

未成年の子どもがいる場合、自分が亡くなったときに後見人を遺言書で指定することができます。

遺言執行者の指定

遺言書には、遺言内容を実行する遺言執行者を指定できます。執行者は金融機関での手続きや不動産の相続登記など、必要な手続きを行ってくれます。また、遺言執行者を選定する人の指定も可能です。

相続で悔いを残さないためにも、まずは弁護士に相談を!

遺言の効力が生じるタイミングと有効期間

遺言の効力は、原則として遺言者が亡くなった時点から発生します。そのため、遺言で遺産を譲り受ける予定の人であっても、遺言者の生前には遺産に対する権利はありません。また、遺言に有効期限はなく、20年以上前に書かれたものでも有効です。遺言は、いつでも内容を撤回・修正・再作成することが可能です。

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「無効」にならない遺言書の書き方

遺言書が「無効」とされるケースは意外と多く、遺言には法律で定められた厳格な形式があるためです。遺言者が自己流で遺言書を作成すると、この形式に合致せず無効とされるリスクが高まるため、注意が必要です。

遺言書にはいくつかの種類がありますが、特によく利用されるのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。公正証書遺言は、公証人が公務として作成するため、要件違反による無効のリスクがほとんどありません。無効になりやすいのは主に自筆証書遺言で、以下のポイントを押さえて作成する必要があります。

全文を自筆で記載

遺言書は基本的に全文を自筆で書く必要があります。パソコンや代筆を使用すると無効となるので注意が必要です。ただし、「財産目録」の部分のみパソコンや資料添付が認められています。

日付を記載

遺言書には日付が必須で、これも自筆で書く必要があります。日付が抜けると遺言書全体が無効になるので、必ず記入しましょう。

氏名の自筆と押印

遺言者の署名と押印も必要です。印鑑は実印である必要はなく、認印でも問題ありません。

訂正や加筆は定められた方法で行う

訂正や加筆が必要な場合、厳格な手続きに従う必要があります。たとえば訂正箇所に二重線を引き、近くに押印のうえ「2字削除」などの指示を書いて署名します。加筆の場合は吹き出しで文書を挿入し、押印し、「4字追加」などと記入して署名します。
訂正方法は非常に複雑で、間違えると無効になる可能性があるため、自信がない場合は遺言書を再作成することをお勧めします。

書面での作成

遺言書は必ず書面で作成しなければなりません。録画や録音による遺言は認められないので、注意しましょう。

無効になるケースとしては、以下のような例が多く見られます

  • タイトルや一部がパソコンで作成されている。
  • 作成時に認知症などで判断能力が欠けていた。
  • 間違った訂正方法(修正液使用や塗りつぶし)で修正している。
  • 相続人が遺言書を改ざん、または偽造している。

また、自筆証書遺言や秘密証書遺言を見つけたら家庭裁判所での検認が必要です。検認を受けずに開封すると、罰則が課される可能性もあります。なお、検認を受けても遺言書が無効とならない保証はありません。正しい方法で作成されていない場合は、検認済みでも無効となります。

法改正により、自筆証書遺言を法務局で保管する制度ができました。この制度を利用すると、保管時に法務局の担当者が内容を確認してくれるため、無効になるリスクが大幅に減ります。検認も不要となるため、これから自筆証書遺言を作成する方はぜひ活用してみてください。

遺言書作成で失敗したくない方は、弁護士への相談がおすすめです。

意に沿わない遺言書が見つかったら?

「特定の相続人にすべての遺産を渡す」といった不公平に感じる遺言書が見つかると、他の相続人が納得できない場合もあります。
こうしたケースでは、特定の相続人に認められる「遺留分」の主張が有効です。遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められる最低限の取り分で、たとえ全ての財産を長男に相続させる遺言書があっても、他の相続人は「遺留分侵害額」として金銭を請求することができます。これは「お金で取り戻す」方法として有効です。

また、遺言書があっても「相続人全員の同意」があれば別の方法で遺産を分割できます。たとえば「次女にすべての遺産を相続させる」とあっても、相続人が全員納得すれば、兄弟で均等に分けることが可能です。不公平と感じる遺言書が見つかった場合、まずは相続人同士でよく話し合い、どうしても合意が得られない場合には遺留分侵害額請求を検討してください。

「もめない遺言」を作成するための工夫

遺言書が無効になったり、遺留分を侵害すると遺留分侵害額請求によるトラブルが生じることがあります。こうしたトラブルを未然に防ぐため、以下のポイントに留意して遺言書を作成しましょう。

遺留分に配慮する

配偶者や子どもなどの遺留分を侵害すると、死後に遺留分に関するトラブルが発生するリスクが高まります。遺言書作成時には、可能な限り遺留分を侵害しないよう配慮することが大切です。

公正証書遺言を利用する

自筆証書遺言は形式的な不備によって無効になるリスクがあり、死後に検認が必要となり相続人の負担が増えます。確実に効力を持たせたい場合は、公正証書遺言の利用がおすすめです。

弁護士に相談する

遺言書を自分で作成すると、形式や内容に不備が生じやすくなります。司法書士や弁護士といった専門家に相談し、サポートを受けることでリスクを減らせます。また、弁護士を遺言執行者として任命すると、遺言内容がよりスムーズに実行されやすくなり安心です。

弁護士 御厨

せっかく作成した遺言書が無効になるのは避けたいものです。また、遺言書によって遺留分に関するトラブルを引き起こすのも本意ではないでしょう。相続手続きをスムーズに進めるためには、弁護士のサポートがあると安心です。困ったときは、ぜひ弊所ご相談ください。

(この記事は2022年10月1日時点の情報に基づいています)

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この記事を書いた人

弁護士|注力分野:相続

現在は立川の支店長弁護士として相続分野に注力して奮闘しております。今後も相談者の心に寄り添い、活動していく所存です。どのような法律問題でも、お気軽にご相談ください。

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