「兄は母の介護をすべて私に任せ、自分は全く手を貸さなかった。それでも遺産を半分ずつ分けるなんて納得できない。」
こうした不公平さを感じて、介護をしていない人の相続分を減らしたいと思う方は多いかもしれません。しかし、残念ながら介護をしていなかったことを理由に、法律で相続分を減らすことはできません。
それでも、特定の方法を使えば、介護に貢献した人がより多くの遺産を受け取る可能性を高めることができます。結果として、介護をしていなかった人の遺産額が減り、介護に対する不満も少しは和らぐでしょう。
介護をしていない人よりも多くの財産を相続する方法には、亡くなった後の対応と、生前の準備があります。
亡くなった後の方法としては、寄与分を主張する手段があります。しかし、寄与分が認められるには厳しい条件があるため、簡単には適用されません。たとえば、仕事を辞めて毎日介護をしていたような、相当な貢献が求められます。寄与分を主張するには、その条件を満たしているかどうかを確認し、証拠を揃える必要があります。
本記事では、介護と相続の関係、そして介護した人が多くの遺産を相続するための方法を詳しく解説しています。
介護しなかった相続人に遺産を渡したくない場合は?
兄弟間で介護の負担に差があった場合、「介護をしなかった相続人には遺産を渡したくない」と考えることは自然な感情です。しかし、介護を理由に相続分を減らすことはできません。
まず、介護と相続の関係について、以下のポイントを解説します。
【介護と相続の関係】
- 介護をしなかったことを理由に相続分を減らす法律は存在しない
- 【亡くなった後】「寄与分」の主張が認められれば、介護をしなかった人より多く遺産を受け取ることができる
- 【生前の場合】事前に対策をすれば、確実に介護をしなかった人より多く遺産を受け取れる
介護しなかったことを理由に相続分を減らすことはできない
結論として、介護をしなかったことを理由に、他の相続人の相続分を減らす法律はありません。相続人としての権利は、介護の有無に関係なく法定されています(民法第886条~890条、900条、901条)。介護をしていたかどうかに関わらず、相続人が法定相続分を主張できるのが原則です。
実際には、誰がどの財産をどれだけ相続するかは、民法に基づいた法定相続分を参考にしつつ、相続人同士の話し合いによって決めます(民法第906条)。介護をしていなかった相続人が「あなたが介護してくれたから遺産を多めに」と合意すれば良いのですが、現実的には、全員が納得する分割方法を見つけるのは難しいことが多いです。
もし、亡くなった後に「介護と相続は関係ない。遺産は法定相続通りに分けるべき」と主張された場合、介護を理由に相続分を減らすのは非常に困難です。
【亡くなった後】「寄与分」を主張する方法
介護をしていた相続人が、寄与分の制度を活用すれば、法定相続分に加えて多くの遺産を受け取ることが可能です。寄与分が認められれば、介護をしていなかった相続人が受け取る遺産が減ることになります。ただし、寄与分の認定は簡単ではなく、特に高い貢献度が求められます。介護を理由に寄与分を主張する場合は、詳細な資料の収集と、法律的な要件を満たしているかどうかを確認する必要があります。
【生前の場合】確実に多くの遺産を相続するための対策
介護をしていた相続人が、介護をしていない人より多く遺産を相続するためには、生前からの対策が最も効果的です。寄与分を認めてもらうことは難しいため、生前対策として遺言書の作成や、生前贈与を行うことで、確実に多くの遺産を受け取る手段を講じることができます。
このように、生前からしっかりと対策を進めることで、介護の貢献が適切に評価され、遺産分割に反映される可能性が高まります。