義母の遺産相続トラブルを防ぐための基礎知識を、弁護士が解説!

義母の遺産相続は、配偶者や家族間で特有の問題が発生しやすいテーマです。特に相続人の妻のような法定相続人でない人物には相続権がないため、遺産分割を巡るトラブルや感情的な対立が起こることもあります。本記事では、義母の遺産相続における法的ルールや注意点、相続人の妻が財産を取得するための具体的な方法を解説します。遺言や養子縁組、生命保険の活用、生前贈与などの選択肢を比較し、それぞれのメリット・デメリットも詳しく紹介。相続トラブルを回避し、希望する形で財産を引き継ぐためのポイントをわかりやすく説明しています。

目次

法定相続人の範囲と妻の立場について

妻は、結婚後に家業を手伝ったり、義父母の介護に尽力したりするケースが多く見られます。そのため、義父母が亡くなった際に「当然遺産相続ができる」と考えることも少なくありません。
しかし、法律上、相続人の妻には相続権がありません。民法が定める法定相続人の範囲は以下の通りです。

法定相続人の順位

  1. 配偶者
    常に法定相続人となります。
  2. 第1順位:子ども
    相続人が生存していれば問題ありませんが、相続人が既に亡くなっている場合はその子ども(被相続人の孫)が代襲相続します。ただし、相続人の妻には相続権がありません。
  3. 第2順位:親
    子供がいなければ、父母が相続人となります。
  4. 第3順位:兄弟姉妹
    相続人も義父母の親も亡くなっている場合、兄弟姉妹が相続人になります。

このように、法律では義父母の遺産が長男の嫁に渡らず、義父母とほとんど関わりのない親族が相続することもあり得ます。これに対し、相続人の妻や義父母が納得できない場合も少なくありません。

相続人の妻に寄与分が認められるか?

寄与分とは、遺産の形成や維持に特別な貢献をした法定相続人が、相続分を増やせる仕組みです。相続人の妻は、義父母の介護や家業の手伝いで貢献することが多いですが、法定相続人ではないため寄与分は認められません。

しかし、平成30年7月の法改正により、介護や看病などで貢献した「親族」に対して「特別寄与料」という金銭請求権が認められるようになりました。ただし、この制度でも相続人の妻が遺産分割協議に直接参加することはできません。

相続人の妻に遺産を残す方法

相続人の妻に遺産を残したい場合、次の方法を検討する必要があります。

遺言書の作成

義父母が遺言で相続人の妻に財産を渡す意思を明確にする方法です。

養子縁組

相続人の妻を義父母の養子にすることで、法定相続人の資格を与える方法です。

生命保険の受取人に指定

生命保険金は相続財産に含まれないため、受取人に指定することで財産を渡すことが可能です。

生前贈与

生前に財産を贈与することで、相続時のトラブルを回避できます。

孫への相続を検討

孫を介して間接的に財産を引き継ぐ方法もあります。

それぞれの方法については、具体的な手続きや注意点を詳しく解説する必要があります。続きは次項をご覧ください。

遺言で遺産を相続人の妻に残す方法

遺言は、人が最終の意思を法的に残す手段で、法定相続より優先されます。これにより、相続人の妻のように法定相続人でない人物にも遺産を渡すことが可能です。遺言では、特定の財産を渡す「特定遺贈」や、「全体の〇割を遺贈する」といった包括的な遺贈も選べます。

ただし、包括的遺贈の場合、相続人の妻は遺産分割協議に参加する必要があり、他の相続人とのトラブルに発展する可能性があります。そのため、特定遺贈がより適切な場合もあります。

遺言の作成には、自筆証書遺言公正証書遺言があります。自筆証書遺言は簡単に作成できますが、無効となるリスクが高く、特に相続人の妻への遺贈では他の相続人から無効主張される恐れがあります。安全性を重視する場合は、公証人が関与する公正証書遺言を選択しましょう。

また、遺言作成時には遺留分にも配慮が必要です。法定相続人(子や配偶者)の遺留分を侵害しない形で遺言を作成することで、トラブルを防ぎます。

養子縁組による相続権の取得

相続人の妻を法定相続人にするには、義父母との養子縁組を行う方法があります。養子も実子と同等の相続権を持つため、養子縁組をすれば相続人が先に亡くなっても相続人の妻が遺産を相続できます。

ただし、養子縁組により法定相続人となることで、相続人の妻は遺産分割協議に参加する義務が生じます。他の相続人が反発し、協議が長引いたり調停に進む可能性もあるため、事前に家族間での合意を得ておくことが重要です。

生命保険を活用した財産の引き渡し

生命保険の受取人を相続人の妻に指定する方法も有効です。生命保険金は遺産分割の対象外であり、他の相続人と共有する必要がないため、相続トラブルを避けやすい手段です。

ただし、生命保険金は税法上「みなし相続財産」とされ、相続税の対象になります。そのため、税負担を含めた計画を立てることが大切です。

生前贈与による財産の移転

生前贈与は、被相続人が生前に財産を渡す方法で、遺産分割の対象外となるため、確実に相続人の妻に財産を移せます。対象は不動産や預貯金など幅広い資産に適用できますが、贈与税が課される点に注意が必要です。

贈与税を抑えるには、以下の方法が考えられます。

暦年贈与

年間110万円以下の贈与を繰り返す。

養子縁組後に贈与

養子縁組を行うことで適用される税制特例を活用する。

これらの方法を活用することで、税負担を軽減しつつ、相続人の妻に財産を渡すことが可能です。

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孫への代襲相続について

相続人が義父母(祖父母)より先に亡くなっていても、相続人の子ども、つまり被相続人の孫が生存している場合、孫は「代襲相続人」として遺産を相続する権利があります。
代襲相続では、孫が相続人としての地位を引き継ぐため、孫の法定相続割合は長男と同じです。もし孫が複数いる場合には、相続人の法定相続分を孫たちで均等に分けることになります。

このように、相続人の妻自身が相続できなくても、子どもである孫が相続することで、家族全体として親の遺産を取得する形が取れます。ただし、孫の財産は独立したものであり、親である相続人の妻が自由に使えるわけではありません。そのため、「孫が相続するから大丈夫」という割り切りだけでは解決が難しい場合もあるでしょう。

複数の方法を組み合わせて効果的に財産を移転する

相続人の妻に財産を渡すための方法は複数ありますが、それらを組み合わせることで、より効果的な財産移転が可能です。

養子縁組との組み合わせ

相続人の妻と義父母が養子縁組を行ったうえで、以下のような手段を活用する方法があります。

  • 養子縁組後に、生前贈与を行う。
  • 養子縁組後に、多くの遺産を相続させる内容の遺言を作成する。
  • 生命保険の受取人として相続人の妻を指定する。

特に生前贈与の場合、遺言書に「特別受益の持戻し免除」を明記しておくと、他の相続人から特別受益を理由に贈与分を減らされるリスクを防げます。

生命保険との組み合わせ

生命保険と他の手段を組み合わせることも有効です。たとえば、生命保険と生前贈与を併用することで、贈与税や相続税の負担を軽減しつつ、財産を相続人の妻に移転できます。また、遺言と併用すれば、相続人の妻により多くの財産を確実に残すことが可能になります。

弁護士 御厨

相続人の妻には法定相続権がないため、何もしなければ姑や舅の遺産を直接受け継ぐことはできません。
財産を希望通りに渡すには、遺言や養子縁組、生前贈与などを適切に組み合わせて活用する必要があります。そのためには、相続法に詳しい弁護士など専門家のサポートを受けることが不可欠です。
当事務所では、遺産相続に関するさまざまなご相談を承っております。「遺産が受け取れないのでは」と不安な方や、「特定の人に確実に財産を承継させたい」と考えている方は、ぜひお早めにご相談ください。
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この記事を書いた人

弁護士|注力分野:相続

現在は立川の支店長弁護士として相続分野に注力して奮闘しております。今後も相談者の心に寄り添い、活動していく所存です。どのような法律問題でも、お気軽にご相談ください。

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