相続手続きは、依頼する代行先によって対応できる範囲が異なります。
相続手続きを専門家に依頼する場合、どの代行先を選ぶかによって、対応してもらえる内容が変わるため、注意が必要です。相続手続きは下記の表のような流れで進めていくことが一般的ですが、依頼する手続きに対応できる専門家を選ぶことが大切です。
相続手続き内容ごとの代行先
タイミング | 相続手続き内容 | 銀行 | 弁護士 | 司法書士 | 税理士 | 行政書士 |
---|---|---|---|---|---|---|
すぐ | 遺言検認の申し立て | 〇 | 〇 | 〇 | (※3) | × |
3か月以内 | 法定相続人の調査・確定作業 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
相続財産の調査 | 〇 | 〇 | 〇 | (※4) | 〇 | |
相続放棄の申し立て | 〇 | 〇 | △ | (※4) | × | |
4か月以内 | 相続人間の紛争解決 | 〇 | 〇 | △ | (※5) | × |
10か月以内 | 遺産分割協議書の作成 | 〇 | 〇 | △ | (※6) | 〇 |
預貯金の解約払い戻し | 〇 | 〇 | 〇 | △ | 〇 | |
有価証券の名義変更 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | 〇 | |
不動産の名義変更 | 〇 | △(※1) | 〇 | × | × | |
自動車の名義変更 | 〇 | △(※7) | × | × | 〇 | |
相続税の申告 | 〇 | △(※2) | × | 〇 | × |
※1 司法書士に任せるケースが多い
※2 国税局長に税理士業務を行う旨の通知をした弁護士は可能
※3 遺産に不動産が含まれている場合に限る
※4 代理申請はできない
※5 認定司法書士に限り、140万円以下の遺留分侵害額請求に関する対応等は可能
※6 相続税が発生する場合に限る
※7 本人でやるか、行政書士に任せるケースが多い
相続の発生を知ってから、相続放棄の申し立ては3か月以内、相続税の申告は10か月以内と、それぞれ期限が定められています。そのため、これらの手続きは必ず期限内に行わなければなりません。
専門家に代行を依頼すれば費用はかかりますが、面倒な手続きをすべて任せて最短で手続きを完了することが可能です。手続きを依頼したい内容に応じて、最適な代行先を選び、上手に活用しましょう。
相続手続き代行を依頼できる5つの選択肢
相続手続きを代行する専門家にはいくつかの種類があり、それぞれの依頼先によって対応できる手続き内容が異なります。ここでは、代表的な5つの依頼先の特徴と、どのような人におすすめかについてご紹介します。
主な相続手続き代行の依頼先
- 銀行
- 弁護士
- 司法書士
- 税理士
- 行政書士
銀行
銀行は、相続手続き全般をワンストップで代行することができます。弁護士や司法書士などの専門家と連携し、すべての手続きをまとめて依頼できるため、手間が省けます。
銀行の特徴
- 日頃から利用しているため信頼しやすい。
- 一括してすべての手続きを任せられる。
- 銀行が紹介する専門家と組織的に手続きを進めるため、安心感がある。
銀行のデメリット
- 弁護士や税理士を仲介するため、費用が高くなることがある。
銀行に依頼がおすすめの人
- 相続手続きに費用を惜しまない人。
- ワンストップで手続きを完了させたい人。
銀行に依頼が不向きな人
- 費用を抑えたい人。
- 一部の手続きだけを代行してもらいたい人。
弁護士
弁護士は法律の専門家であり、自動車の名義変更を除くほとんどの相続手続きを代行できます。特に、相続人間で紛争がある場合や遺産分割協議の代理人が必要な場合に適しています。
弁護士の特徴
- 相続手続き全般を代行可能。
- 相続人間の紛争解決ができる唯一の専門家。
弁護士に依頼がおすすめの人
- 相続人間で意見が対立している人。
- 複雑な相続手続き全般を任せたい人。
弁護士に依頼が不向きな人
- 自動車の名義変更を依頼したい人(この場合は行政書士が適しています)。
司法書士
司法書士は、弁護士に次いで幅広い相続手続きを代行できる専門家です。特に、不動産の名義変更や登記手続きを得意としています。
司法書士の特徴
- 相続した不動産の登記手続きに強い。
- 多様な相続手続きをカバーできる。
司法書士に依頼がおすすめの人
- 相続した不動産の登記手続きを任せたい人。
司法書士に依頼が不向きな人
- 相続人間で紛争がある人(この場合は弁護士が適しています)。
- 相続税の申告を代行してほしい人(この場合は税理士が適しています)。
税理士
税理士は、相続税の計算や申告を中心に、相続手続きの一部を代行する専門家です。特に、複雑な税務処理が必要な場合に頼りになります。
税理士の特徴
- 相続税の計算と申告に強みがある。
- 費用は事前に見積もりを取り、相場とかけ離れていないか確認することが重要。
税理士に依頼がおすすめの人
- 相続税の計算や申告を任せたい人。
- 相続財産の評価が複雑な人。
税理士に依頼が不向きな人
- 相続放棄を希望する人。
- 不動産の名義変更を依頼したい人(この場合は司法書士が適しています)。
行政書士
行政書士は、公的書類の作成を専門とする専門家で、特定の相続手続きを代行できます。特に、自動車や有価証券の名義変更に強みがあります。
行政書士の特徴
- 自動車や有価証券の名義変更、預貯金の解約払い戻しなどの手続きが得意。
- 必要書類の取得や書類作成も担当。
行政書士に依頼がおすすめの人
- 自動車や有価証券の名義変更をしたい人。
- 必要書類の取得や作成を依頼したい人。
行政書士に依頼が不向きな人
- 相続放棄を希望する人。
- 相続人間で揉めている人(この場合は弁護士が適しています)。
- 相続税の申告を依頼したい人(この場合は税理士が適しています)。
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依頼先別の相続手続き代行費用の相場
相続手続きを代行する5つの依頼先の特徴が分かったところで、多くの方が気になるのは費用面でしょう。そこで、依頼先ごとの相続手続き代行費用の相場を詳しく解説します。
依頼先別の相続手続き代行費用の目安
- 銀行【100万円~】
- 弁護士【10万円~数十万円】
- 司法書士【数万円~数十万円】
- 税理士【遺産総額の0.5~1.0%】
- 行政書士【数万円~】
銀行【100万円~】
銀行に依頼した場合、相続手続き代行の費用は100万円以上となるのが一般的です。他の依頼先と比べて費用が高い理由は、銀行が弁護士や司法書士を紹介し、手続きを進める際に仲介手数料が加算されるためです。
弁護士【10万円~数十万円】
弁護士に依頼する場合、相続手続き代行の費用は10万円から数十万円の範囲になります。費用の幅が広いのは、弁護士が単一の手続きを依頼される場合から、相続人の代理人として手続きを全面的に担当する場合まで、対応範囲が多岐にわたるからです。
司法書士【数万円~数十万円】
司法書士に依頼した場合の費用相場は、数万円から数十万円です。主に不動産登記の代行が多く、特定の手続きだけを依頼する場合は数万円で済みます。全般的な相続手続きを依頼する場合、司法書士事務所によっては数十万円かかることもあります。
税理士【遺産総額の0.5~1.0%】
税理士に依頼する際の費用は、遺産総額の0.5〜1.0%が一般的です。ただし、税理士の報酬は自由化されているため、費用は税理士事務所ごとに異なります。遺産の総額が大きくなるほど、財産調査や税額計算が複雑になるため、遺産総額に応じた報酬体系をとることが多いです。
行政書士【数万円~】
行政書士に依頼する場合の費用は数万円からとなります。他の依頼先と比較して費用が抑えられるのは、必要書類の取得や作成、名義変更など、特定の業務に対して依頼するケースが多いためです。公的書類作成の専門家として、正確かつ効率的に代行します。
これらの費用相場を参考に、自分に合った専門家を選んで相続手続きをスムーズに進めましょう。
相続手続きを専門家に依頼する5つのメリット
相続手続き代行の費用相場を見て、依頼を迷っている方も多いかもしれません。しかし、費用をかけてでも専門家に依頼することには、次の5つの大きなメリットがあります。
相続手続きを代行してもらうメリット
- 正確で安心な相続手続きが可能になる
- 時間と労力を節約できる
- 相続人間のトラブルを予防・解決できる
- 節税効果が期待できる
- 状況に応じた適切なアドバイスが受けられる
正確で安心な相続手続きが可能になる
専門家に依頼すると、すべての必要書類を正確に整え、不備のない手続きが可能です。相続手続きは複雑で専門知識が必要な作業であり、自分で行うとミスが生じるリスクがあります。手続きに不備があれば、修正が求められたり、期限に間に合わない場合には、余分な相続税を支払うペナルティを受けることも。専門家のサポートにより、初めての方でも安心して手続きを進められます。
時間と労力を節約できる
相続手続きを代行してもらうと、手続きにかかる時間や労力を大幅に減らせます。忙しい現役世代や体調が優れない方、遠方に住む方にとって、必要書類を揃えたり、他の相続人との交渉を行うことは大きな負担です。代行を依頼すれば、こうした煩雑な作業から解放され、日常生活に集中できます。
相続人間のトラブルを予防・解決できる
弁護士に手続きを依頼することで、相続人間の紛争を防ぎ、スムーズに解決することが可能です。遺言書がない場合や二次相続の際には、相続人同士で遺産の分配を巡って争いが生じることがあります。弁護士が代理人として交渉することで、紛争を最小限に抑え、迅速に解決することが期待できます。
節税効果が期待できる
税理士に相続手続きの代行を依頼することで、効果的な節税が期待できます。税理士のアドバイスにより、遺産の分割方法を調整することで特別控除や特例を活用し、数百万円単位の節税が可能になるケースもあります。さらに、正確な申告が認められるため、相続税務調査のリスクも低減されます。
状況に応じた適切なアドバイスが受けられる
専門家に依頼することで、相続人それぞれの状況に応じた適切なアドバイスが得られます。インターネットで調べることもできますが、ケースごとの適切な対応がわからず不安になることも多いものです。専門家は豊富な経験をもとに、個別の事情に合わせた最善のアドバイスを提供してくれます。
これらのメリットを考慮し、自分に合った専門家に依頼することで、相続手続きをスムーズに進められるでしょう。
相続手続き代行先の選び方
相続手続きを専門家に依頼しようと考えている方へ、選ぶ際のポイントは以下の3つです。
相続手続き代行先を選ぶ際のポイント
- 相続手続きの実績が豊富であること
- 料金が適正であること
- 相談時の対応が良いこと
相続手続きが終わった後に「依頼してよかった」と感じられるよう、これらのポイントを参考にしてください。
相続手続きの実績が豊富であること
代行先を選ぶ際に最も重要なのは、その事務所が相続手続きの実績を多く持っているかどうかです。例えば、相続手続きを任せる場合、近所だからといって刑事事件や離婚調停が専門の弁護士に依頼すると、断られる可能性が高まります。まずは、ホームページや口コミで相続手続きの実績が豊富な事務所を探しましょう。経験豊かな代行先なら、迅速かつ正確に状況を把握し、適切なアドバイスを提供してくれるでしょう。
料金が適正であること
依頼先を選ぶ際には、料金の妥当性も重要なポイントです。多くの事務所では初回相談が無料で行われているため、その際に見積書を作成してもらうことをおすすめします。2~3つの事務所を比較することで、料金の適正さを判断できます。見積もりに不明点があれば質問し、納得のいく回答を得られる事務所は、依頼者の立場に立った料金設定をしている可能性が高いです。
相談時の対応が良いこと
相続手続きの代行を依頼する場合、何度か打ち合わせを行うことが多いため、初回相談時の対応が良い事務所を選ぶことが大切です。専門家の中には、専門用語を多用して説明が分かりにくい場合もあります。気軽に質問できる雰囲気のある専門家なら、安心して手続きを任せられるでしょう。自分が感じた印象を大切にして、信頼できる依頼先を選びましょう。