《死亡直後》相続の話し合いは四十九日頃が最適
相続について話し合う時期として、四十九日頃が最適とされています。
遺産の分け方について話し合い、決めることを「遺産分割協議」といいますが、この協議がいつから始まらなければならない、いつまでに終わらせるべきだといった法律の定めはありません。
死後すぐに始める場合もあれば、数年が経っても始めていないこともあります。
しかし、スムーズな相続手続きを進めるためには、故人の四十九日を目安に話し合いを始めることが望ましいです。四十九日が最適とされる理由は、主に次の3つです。
【相続の話し合いを四十九日頃に行う理由】
◎相続人全員が集まりやすいから
◎四十九日より前は故人を偲ぶ時期とされているから
◎四十九日を過ぎると各種手続きの期限に影響が出る可能性があるから
これらの理由について詳しく見ていきましょう。
相続人全員が集まりやすい
故人の四十九日法要には、ほとんどの場合相続人が揃います。この機会を利用して遺産分割協議を始めるのが効率的です。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、全員の署名と押印が揃わないと遺産分割協議書は成立しません。この書類は、預貯金の引き出しや不動産の名義変更に必要な重要なものです。
遠方に住む相続人がいる場合、別の日に話し合いを設定するのは困難になることもあるため、四十九日は話し合いの絶好のタイミングです。
四十九日より前は故人を偲ぶ時期
日本では、故人が亡くなってから四十九日までは「忌中」とされ、故人を偲び、祈る期間と考えられています。この期間に遺産の話をすることを不謹慎と考える人が多いです。そのため、法要が一区切りついたタイミングで相続の話を持ち出すのが適切とされています。
四十九日を過ぎると手続きが遅れる可能性
相続に関わる手続きには、相続放棄や相続税の申告など、期限が定められているものがあります。遅れるとペナルティを受ける可能性があるため、話し合いを遅らせないことが大切です。
例えば、相続放棄は相続が始まってから3ヶ月以内、相続税申告は10ヶ月以内に行う必要があります。四十九日を過ぎてから準備を始めると、期限に間に合わないこともあるため、早めの話し合いが重要です。
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【相続の話し合いに向けて準備すべきこと】
準備すべきこと | 必要期間 |
---|---|
遺言書の有無確認 | 即日~数日 |
相続財産の調査 | 1~2ヶ月 |
相続人の調査 | 1~2ヶ月 |
これらの準備が整っていない状態で四十九日を迎えると、話し合いがスムーズに進まないことが多くあります。「遺産がどこに何があるのか」を把握できていなければ、遺産を分割することはできません。また、相続人が全員揃っていない場合、話し合いが無駄になりかねません。
その結果、再度集まる必要が出てしまい、相続人全員に余計な負担がかかってしまいます。また、準備が遅れると相続放棄や相続税申告の期限に間に合わないリスクも生じます。
四十九日には有意義な話し合いができるよう、初七日を過ぎたら準備を進めることが大切です。それでは、それぞれの準備内容について詳しく見ていきましょう。
遺言書の有無確認|即日~数日
相続の第一歩は、遺言書の有無を確認することです。遺言は法定相続よりも優先されるため、遺産分割は遺言に基づいて行われます。もし遺言書が後から見つかった場合、すでに行った話し合いが無駄になりかねません。したがって、まずは故人が遺言書を残していないか徹底的に探す必要があります。
遺言書の保管場所は、その形式によって異なります。以下の手順で確認しましょう。
【遺言書の探し方】
- 故人の自宅を探す
- 公証役場に問い合わせる
- 法務局に問い合わせる
相続財産の調査|1~2ヶ月
遺言書がない場合は、次に財産の調査を行います。遺産の内容が不明であれば、話し合いが進みません。財産調査には時間がかかることが多いため、早めに取り掛かることが重要です。特に、借金などのマイナスの財産があるかどうかは、相続放棄を検討する際に必須の情報です。
財産の調査には時間がかかることがあるため、場合によっては専門家に依頼することも検討しましょう。負債が見つかった場合は、早急に相続人に連絡することが望ましいです。
準備が整ったら、話し合いがスムーズに進められるように準備を進めていきましょう。
相続人調査|1~2ヶ月
相続人調査は、話し合いを行う前に必ず完了させる必要があります。この調査では、誰が相続人であるかを確定させるために戸籍を集めます。思ったよりも時間がかかることが多いので、早めに取り掛かりましょう。
「相続人は分かっているから大丈夫」と思うかもしれませんが、まれに予期しない相続人(養子縁組された人や認知された子、異母兄弟など)が見つかる場合があります。このようなケースでは、遺産分割協議は相続人全員で行わなければ無効となり、話し合いをやり直さなければなりません。
さらに、相続人を正確に把握していても、その事実を第三者に客観的に証明できなければ、以後の相続手続き(預貯金の引き出しなど)は進められません。そのため、故人の出生から死亡までの戸籍謄本を集める必要があります。これが複数の市町村にまたがる場合は非常に手間がかかり、煩雑な作業になります。
調査にどれくらいの時間がかかるかは始めてみないと分からない部分もあるため、相続財産の調査と並行して進めることをお勧めします。
相続人調査の具体的な方法については、他の記事で詳しく解説していますので、参考にして漏れのないように準備を進めてください。
《四十九日後》話し合いは早めに開始を|先延ばしによる3つのリスク
四十九日が過ぎている場合は、できるだけ早く遺産分割協議を始めるべきです。法律で話し合いの期限が定められているわけではありませんが、相続放棄や相続税の申告期限が迫ってくるため、後回しにすることは避けましょう。
仮に相続放棄や相続税の申告が不要であっても、相続手続きを先延ばしにすると次のようなリスクが発生する可能性があります。
【相続を先延ばしにするリスク】
◎遺産を受け取るのが遅れる
◎不動産の維持費がかかる
◎相続人が亡くなるとさらに複雑化する
それぞれのリスクを詳しく見ていきましょう。
遺産を受け取るのが遅れる
話し合いがまとまらないと、故人の預貯金は凍結されたままで現金を引き出したり、不動産の名義変更を行ったりすることができません。現金が必要な場面でも、故人の口座から引き出せないという事態に直面する可能性があります。
また、不動産についても、協議が終わらなければ売却や賃貸ができず、時間が経つにつれて資産価値が下がってしまうこともあります。さらに、有価証券は放置すると、最終的に会社が株式を買い取ったり、競売にかけられたりする可能性があるため、注意が必要です。
不動産の維持費が発生する
遺産に不動産が含まれている場合、遺産分割が完了して名義変更が行われるまでは相続人全員の共有となります。その間、固定資産税や都市計画税、管理費などの維持費がかかります。本来であれば早めに売却や相続が完了していれば不要な費用を支払わずに済むはずです。話し合いを先延ばしにすると、これらのコストが無駄に発生してしまいます。
相続人が亡くなると事態が複雑化する
遺産分割協議が終わる前に相続人の一人が亡くなった場合、その相続権が代襲相続により子どもに引き継がれ、協議は一からやり直しになることがあります。例えば、故人の兄が相続人であり、その兄が亡くなると、その子どもたち全員が新たな相続人として加わります。相続人が増えることで、話し合いがさらに複雑になり、進行が遅れる可能性が高まります。
さらに、相続人の中に認知症を発症した人が出ると、成年後見人を立てなければならず、手続きがさらに煩雑になってしまいます。このように、相続人が元気なうちに早めに話し合いを進めることが、スムーズな相続手続きを行うために重要です。
《生前》相続の話し合いは「今」、なるべく早めに
親やパートナーが元気なうちに、相続について話し合う時期は「今」がベストです。相続の話し合いは、不測の事態に備えてできるだけ早く行うことが重要です。確かに、死後の話題は切り出しづらく、先延ばしにしがちですが、いつ入院や介護が必要になるか分かりません。
入院してしまうと「死」を意識させ、相続の話はさらに難しくなります。特に認知症の症状が現れると、正常な判断ができなくなるため、相続の話し合いが事実上不可能になってしまいます。そうした事態になる前に、できるだけ早く話し合いの機会を設けるべきです。
おすすめのタイミングはお盆です。お盆は先祖を供養する時期であり、死後の話題を切り出しやすい雰囲気があります。また、遠方に住む家族が集まることも多いため、相続人全員がそろう絶好の機会です。相続の話し合いは、全員が揃っているときに行うことで、後々のトラブルを防ぎやすくなります。ぜひこの機会を活かしましょう。
《生前》相続の話し合いをスムーズに切り出す方法
相続の話題は、死後について話すことにもなるため、切り出しにくいものです。そこで、以下のようなフレーズを使えば、自然に相続の話を始めることができます。
相続の話を切り出す例
- 「〇〇さんのお母さんが認知症になってしまったそうで…」
- 「◎◎さんのところ、遺産で揉めて裁判になったみたいだね。」
- 「テレビで相続の特集を見たんだけど…」
このように、時事ネタや他の家庭の例、特に身近な失敗例を引き合いに出すことで、話しやすい流れを作ることができます。ただし、相続の話を避けたいという人もいるかもしれません。その場合、無理に話を進めるのではなく、遺言書やエンディングノートを書いてもらうように提案するのも一つの方法です。