疎遠な親族との遺産相続を、円滑に進める方法!

 遺産相続において、疎遠な親族が関わる場合は、手続きが複雑になりやすく、トラブルが発生することも少なくありません。本記事では、疎遠な家族との遺産相続を円滑に進めるためのポイントや、注意すべき点について詳しく解説します。疎遠な親族がいる場合の相続手続きのコツや、トラブルを避けるための具体的な対策を紹介します。

目次

相続人に相続の開始を知らせずに手続きを進めることはできない

 相続が発生した際には、すべての相続人に相続が開始したことを通知しなければなりません。これは、遺言書がある場合でもない場合でも同様です。

以下では、遺言書の有無に応じて、その理由を詳しく説明します。

【遺言書がない場合】遺産分割協議は相続人全員で行う必要がある

 遺言書がない場合、相続財産を「誰が、何を、どのように相続するか」を決めるために、遺産分割協議を行う必要があります。この協議は、全ての相続人が参加して行わなければなりません。

 仮に、相続人のうち1人でも欠けたまま遺産分割協議を進めた場合、後になって別の相続人が存在することが判明すると、協議を最初からやり直す必要が生じます。そのため、相続が開始したことを知った相続人は、全ての相続人に通知を行い、遺産分割協議に参加してもらうことが求められます。

【遺言書がある場合】遺言執行者には遺言の通知義務がある

 遺言書がある場合、その内容に従って相続財産を分割するため、関係者だけがその事実を知っていれば良いと考えるかもしれません。しかし、遺言執行者(遺言の内容を実行する役割を担う者)には、相続人に対して「遺言執行者として相続手続きを進める」という通知を行う法的な義務があります。

 これは、遺言書で遺産を受け取れない相続人にも、遺留分を請求する権利があるためです。この通知義務を怠ると、遺言執行者は責任を追及される可能性があります。

相続人の連絡先が分からない・連絡が取れないときの対処法

 相続の開始を相続人に伝えたくても、相続人の連絡先が分からない、または連絡が取れないといった状況に陥ることもあります。しかし、そのような場合でも、何とかして相続人と連絡を取る手段を講じる必要があります。ここでは、相続人と連絡が取れないときの対処法について解説します。

相続人の住所が分からない場合

 相続人の住所が分からない場合、その相続人の戸籍附票を確認する方法があります。戸籍附票は、その人の本籍地が所在する市区町村役場で発行してもらうことができます。戸籍附票には、本籍地とともに住民票に登録されている住所が記載されているため、これにより住所を特定することができます。

自分で調査するのが難しい場合は、専門家に依頼することも検討しましょう。

相続人の連絡先が分からない場合

 住所が分かっても、相続人とコンタクトが取れなければ意味がありません。連絡先が分からない場合には、以下の方法を試してみましょう。

  • 手紙を送る
    相続人の住所が判明している場合、その住所に「〇〇が亡くなったため、連絡を取りたい」という旨の手紙を送ってみましょう。手紙を見た相手から、何らかの返事があるかもしれません。
  • 現地を訪れる
    手紙を送っても返事がない場合には、実際に現地を訪問してみましょう。手紙が届いていなかったり、後回しにされていたりするだけかもしれません。また、住民票の住所に居住していない可能性もあるため、現地確認が有効です。
  • SNSで情報を探す
    手紙に返事がなく、現地を訪問することも難しい場合、SNSを活用して情報を探してみましょう。特にFacebookなどではフルネームで登録している人が多く、相続人を見つけられる可能性があります。SNSのDM(ダイレクトメッセージ)機能を使って、直接連絡を取ることができます。
  • 探偵に依頼する
    これらの方法で連絡が取れない場合は、探偵事務所や興信所の利用も検討しましょう。ただし、探偵や興信所への依頼は数十万から100万円程度の費用がかかることがあるため、状況に応じて慎重に判断してください。

相続人と連絡が取れない・無視される場合

 前述の方法を試しても連絡が取れない場合、次の2つの可能性が考えられます

  1. 生存しているが、意図的に応答していない(無視している)
  2. 生存が確認できない(生死不明)

 2つ目のケースの場合、後述する「相続人が行方不明のとき」の対処法を検討してください。1つ目の場合には、遺産分割調停を家庭裁判所で行うことを検討するべきです。遺産分割調停は、相続人同士の話し合いが進まない場合に、家庭裁判所が調停委員を通じて話し合いを進める法的手続きです。

相続人が生死不明の場合

 相続人が生死不明である場合、生死不明の期間が「7年以内」か「7年以上」かによって対応が異なります。

生死不明が7年以内の場合

 相続人の生死不明が7年以内である場合、まず警察に捜索願を提出しましょう。捜索願を出すことで、何らかの情報が入った際に警察から通知を受けることができます。ただし、捜索願を出しても事件性が確認されない限り、警察は積極的な捜査を行わないため、あくまで情報を得る手段として考えておきましょう。

 続いて、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てます。相続手続きを進めるためには、相続人が見つかるまで待つわけにはいかないため、この手続きが必要です。不在者財産管理人は、行方不明者の代わりに財産を管理する役割を担う専門家で、弁護士や司法書士などが家庭裁判所によって選任されます。この管理人が遺産分割協議に参加します。

生死不明が7年以上の場合

 相続人が生死不明で7年以上経過している場合、「失踪宣告」を行うことができます。

 失踪宣告とは、法律上その人物を「死亡した」とみなすための手続きです。この制度は、長期間生死不明の人を生存者として扱い続けると、相続手続きなどで不便が生じることを防ぐために設けられています。失踪宣告が行われると、その人物は相続人として扱われなくなり、他の相続人のみで遺産分割協議を進めることが可能になります。

相続人が困らないように遺言書を作成しよう

 もし前妻や愛人との間に子どもがいる場合や、連絡が取れない相続人がいる場合、相続が発生した後、他の相続人が困難な状況に直面する可能性があります。また、相続人同士が不仲な場合、相続に関するトラブルが発生することも考えられます。

 これらの問題を避けるためには、遺言書を作成しておくことが非常に有効です。遺言書を通じて「誰に、何を、どのように」相続するかを明確にしておくことで、相続トラブルを未然に防ぐことができます。

遺言書の作成は専門家に相談するのがおすすめ

 遺言書は、ただ自分の希望を書き残すだけでは十分ではありません。正式な形式に従って作成しなければ、せっかくの遺言書が無効となる可能性があります。

 さらに、遺言書を作成する際には、遺留分についても考慮する必要があります。これを怠ると、逆にトラブルの原因となることもあります。

 そのため、遺言書を作成する際は、相続に詳しい専門家に相談することを強くお勧めします。専門家に相談することで、あらゆる点を考慮した適切なアドバイスや提案を受けることができます。

 遺言書は、大切な家族に向けた最後のメッセージです。適切で有効な遺言書を作成するためにも、司法書士などの相続の専門家に相談することを検討してください。

遺言書の作成とともに遺言執行者も任命しよう

 遺言書を作成する際には、遺言執行者も任命しておくことが重要です。遺言執行者とは、遺言の内容を実行する役割を担う人のことです。

 遺言執行者は、未成年者や破産者でない限り、誰でもなることができますが、弁護士などの専門家を任命しておくことが望ましいです。専門家を遺言執行者に任命しておくと、相続が発生した際に相続人の連絡先が不明な場合でも、適切な調査や対応をしてくれます。また、疎遠になっている相続人への連絡なども代行してくれるため、精神的な負担が軽減されます。

 遺言執行者としては、数十年後も対応可能な弁護士法人を選ぶことをおすすめします。個人を任命した場合、その人が相続発生時にどのような状況にあるか分からない上、個人経営の弁護士が将来的に営業を続けている保証はありません。

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この記事を書いた人

弁護士|注力分野:相続

現在は立川の支店長弁護士として相続分野に注力して奮闘しております。今後も相談者の心に寄り添い、活動していく所存です。どのような法律問題でも、お気軽にご相談ください。

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