故人の財産管理について弁護士が解説!

人が亡くなると、その時点で銀行口座は凍結されます。このため、口座の解約や払戻しの手続きには、相続人全員の協力が必要となります。亡くなった方の名義で残された預貯金は相続財産として相続人に引き継がれますが、そのためには口座を解約し、払戻しの手続きを行う必要があります。手続きに必要な書類や完了までの期間は、金融機関によって異なることも押さえておくべきポイントです。相続手続きの中で必ずと言っていいほど発生するのが、この銀行口座に関する手続きです。

目次

亡くなった人の銀行口座は凍結されます

銀行口座の凍結とは、口座からの入出金が一切できなくなることを指します。中には「死亡届を提出すると凍結される」や「亡くなった瞬間に凍結される」といった誤った情報を信じている方も多いですが、実際には「金融機関が口座名義人の死亡を知った時」に凍結が行われます。

現在、亡くなった方の口座が凍結されているかどうかが分からない場合は、金融機関に直接足を運び、入出金が可能かを確認してみましょう。

【口座が凍結していた場合】

口座が凍結されている場合、その口座からお金を引き出すには、各金融機関の所定の相続手続きを行い、払戻しを受ける必要があります。

この手続きを開始してから実際に払戻しを受けるまでには、通常数週間以上かかります。

「急ぐ必要はない」と感じている方でも、口座が凍結されている場合には注意が必要です。たとえば、公共料金やクレジットカードの引き落とし口座が凍結されると、その時点で未払い(滞納)の扱いになる可能性があり、早めに名義変更や引き落とし口座の変更を済ませることが重要です。滞納が発生すると、次月以降の請求に遅延損害金が追加されたり、余計な費用が発生したりすることがあります。

【口座が凍結していなかった場合】

口座が凍結されていない場合、通常通り入出金が可能です。暗証番号が分かっていれば、預金を全額引き出すこともできます。

しかし、他の相続人から見れば、「勝手に引き出して何に使ったのか」「どこかに隠しているのではないか」と疑われ、トラブルになることがあります。やむを得ず資金を引き出す場合でも、いくら引き出したのか、何に使ったのか、そして残高について、他の相続人に事前に報告しておくことをおすすめします。

銀行口座の相続手続きの流れと必要書類

相続手続きは初めての方が多く、特に亡くなった方の銀行口座を解約する際には、どのような手順を踏み、どの書類が必要か分からないことがほとんどです。まずは相続手続きの概要を理解することで、ご自身で手続きができるか、または専門家に依頼するべきかの判断材料にしてください。

相続手続きの流れ

銀行口座の相続手続きの一般的な流れは以下の通りです。

(金融機関によっては、複数回の来店や予約が必要になる場合があります)

  1. 事前準備: 戸籍の収集や遺言書の有無の確認など
  2. 銀行への連絡: 相続届など、金融機関指定の書類を取得
    (銀行への連絡時点で、その銀行の全ての口座が凍結されます)
  3. 必要書類の提出: 書類をすべて揃えて銀行へ提出
  4. 口座の解約と払戻し: 銀行側で処理が完了すると、口座が解約され、預貯金が払い戻されます
    (一部の銀行では、名義変更が可能な場合もありますが、最近では対応していないことが多いです)

手続きの完了までの期間は、金融機関や状況(相続関係や時期など)によって異なるため、提出時に確認することをお勧めします。

一般的な必要書類

銀行口座の相続手続きに必要な一般的な書類は以下の通りです。

(遺言書や遺産分割協議書の有無により、必要な書類が異なる場合があります)

  • 亡くなった方の出生から死亡までが記載されたすべての戸籍
  • 相続人全員の現在の戸籍
  • 相続届(銀行指定の書類で、「相続手続依頼書」など名称が異なる場合があります)
  • 実印(相続人全員が銀行所定の相続届に押印)
  • 印鑑登録証明書(相続人全員分)
  • 亡くなった方名義の通帳やキャッシュカード

これらの書類のいずれかが欠けていると手続きが進められませんので、全て揃えて正確に記入・署名・押印をしておくことが重要です。

(通帳やキャッシュカードを紛失している場合は、「紛失届」などの書類を提出することで手続きが可能です)

また、「すべての戸籍を揃える」といっても、出生から死亡までのすべての戸籍を収集することは多くの方にとって分かりづらい作業です。結婚や転居による本籍地の変更など、複数の戸籍を取得し、その中で配偶者や子供の有無を証明する必要があります。相続手続きには相続人「全員」の協力が不可欠で、亡くなった方のすべての戸籍を揃え、相続人であることを証明する必要があります。

払戻された預貯金の受け取り方

相続手続きが完了すると、亡くなった方の口座にあった預貯金は払い戻されます。受け取り方法には、以下のような選択肢があります

  • 相続人代表者1人の口座にまとめて入金
  • 相続人全員に分割して入金

ただし、銀行によっては対応が異なるため、代表者の口座に一度まとめて入金し、その後に各相続人に分配する方法が最も簡単でわかりやすいです。

多くの場合、相続人代表者が葬儀費用や病院代などを立て替えているため、それらの費用を精算した上で、他の相続人に分配するケースもあります。

※代表者から各相続人への送金が適切に行われるか不安な場合は、事前に遺産分割協議書を作成しておくことをお勧めします。

代表相続人から他の相続人への送金は贈与になる?
相続による財産の譲渡は贈与とは異なり、贈与税の対象外です。代表相続人が「預かった財産」を分配する行為は、遺産分割の一環であり、贈与税は発生しません。ただし、これは本当に遺産分割によるものであることを証明するために、遺産分割協議書を作成し、保管しておくことが推奨されます。

相続手続きは思った以上に大変

相続手続きが時間を要するのは、銀行側の処理だけでなく、相続人側の準備のためでもあります。よくつまずくポイントや見落としがちな点を4つご紹介します。

相続人全員の協力が必要

相続手続きには、相続人全員の実印と印鑑証明書が必要です。実印を登録していない人がいる場合は、役所で印鑑登録の手続きから始める必要があります。また、連絡が取れない相続人や未成年者がいる場合は、家庭裁判所で特別な手続きを行うことがあります。相続人が多いほど、また相続関係が複雑なほど、全員の協力を得るのが難しく、結果として手続きが進まない場合もあります。

書類の不備が多い

相続手続きには、亡くなった方および相続人全員の戸籍が必要です。特に、亡くなった方の戸籍は出生から死亡までのすべてを揃える必要があります。これに不備があると、再度役所に行く手間が発生します。戸籍は本籍地の役所でのみ発行されるため、遠方であれば取得に時間と労力がかかります。

銀行の営業時間が限られている

銀行の窓口は多くの場合、平日の15時までしか開いていません。仕事や育児などで時間を作るのが難しい方も多いでしょう。さらに、コロナ禍以降、相続手続きの相談が完全予約制となっている銀行も多く、急に窓口に行っても対応してもらえないことがあります。

手続きは口座のある支店で行う

銀行の相続手続きは、口座のある支店で行う必要があります。例えば、東京に住んでいて、亡くなった方の口座が大阪にある場合、東京の支店ではなく、大阪の支店での手続きが必要です。郵送での対応が可能な場合もありますが、本人確認や投資信託などの運用商品のリスク説明が必要な場合は、支店窓口での対応が求められることが多いです。

こうした状況から、手続きを先延ばしにしてしまうこともあるかもしれませんが、その場合、大きなリスクが伴います。

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緊急でお金が必要な場合にできること

銀行が相続手続きを進めるためには、相続人全員の書類が揃っている必要があります。これは、余計なトラブルを避けるための措置です。

しかし、どうしても急いでお金が必要な場合もあるでしょう。そんな時に利用できるのが、2019年に導入された「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」です。

ここでは、簡単にその概要を紹介します。

この制度の主な特徴は以下の2点です

  1. 相続人全員ではなく、1人の手続きで払戻しが可能であること
  2. 払戻しできる金額に上限が設けられていること(預金額の3分の1以内で、自分の法定相続分まで)

上限があるとはいえ、この制度を活用すれば、たとえ口座が凍結されていても預金の一部を引き出すことが可能です。急な資金が必要な場合には、とてもありがたい制度です。

ただし、引き出した預金も相続財産に含まれるため、遺産分割協議や相続税の申告の際には正確に計上する必要があります。また、残りの預金については通常の相続手続き(相続人全員の協力が必要)を行わなければなりません。この制度はあくまでも「緊急対応」として理解しておきましょう。

銀行の相続手続きに関するよくある質問

ここでは、実際によく寄せられる質問を3つご紹介します。

相続でお金を受け取った場合、確定申告は必要ですか?

相続で受け取ったお金に関しては、確定申告の必要はありません。なぜなら、確定申告は「所得」に対するものであり、相続で得たお金は「所得(稼いだお金)」ではないからです。

ただし、以下の場合には確定申告が必要になることがあります:

  • 相続した株や投資信託を売却して利益が出た場合
  • 相続した不動産を売却して利益が出た場合

これらは相続後に売却して利益が確定したため、確定申告が必要となる可能性があります。

預金が少額の口座を手続きせずに放置しても問題ないですか?

「問題ない」と言えるかどうかは、受け取る意思があるかどうかによります。もしその口座の残高を受け取るつもりがないのであれば、手続きをせずに放置しても罰則はありません。

ただし、放置することにはメリットがなく、むしろリスクが伴います。他の相続手続きで戸籍などを集める必要がある場合、少額であっても一緒に手続きをしておくことをお勧めします。

放置した場合のリスクについては、以下の記事で詳しく解説しています。

どの銀行に口座があるのかわからない場合、どうすればいいですか?

まず、通帳やキャッシュカードを徹底的に探しましょう。それでも見つからない場合は、亡くなった方の記憶や行動を思い出してみることが重要です。

例えば、生前の会話や行動の中で、どこかの銀行に行ったり、ATMを利用していた記憶がないか、銀行の担当者が自宅を訪問したことがないかを確認してみましょう。

最後の手段として、亡くなった方の住所や勤務先の近くにある銀行に直接相談に行くことも有効です。この場合、相続人であることを証明する書類が必要ですが、銀行で照会してもらうことで効率的に見つけられる可能性があります。

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この記事を書いた人

弁護士|注力分野:相続

現在は立川の支店長弁護士として相続分野に注力して奮闘しております。今後も相談者の心に寄り添い、活動していく所存です。どのような法律問題でも、お気軽にご相談ください。

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