遺言の無効・有効について

目次

遺言の効力が争われる代表的なケースとその対処法

遺言書の形式に問題がある場合

相続が始まった後、被相続人が生前に作成した遺言書について次のような問題が発覚することがあります:

  • 「遺言書を開封したところ、押印がなかった」
  • 「遺言書がパソコンで作成・印刷されたものだった」

法律上、遺言書には公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の3つの種類があります。それぞれに法定の形式が定められており、これに違反している遺言書は効力が認められません。例えば、自筆証書遺言に日付の記載がない、または印鑑が押されていない場合は、法的に有効ではありません。

遺言者の遺言能力に疑問がある場合

形式的な問題だけではなく、遺言書の有効性が認められるかどうか判断が難しいケースもあります。代表的なものとしては

  • 「長年認知症だった父の遺言書が見つかったが、作成できたとは思えない」
  • 「故人と同居していた家族が自分に有利な内容の遺言書を書かせたのではないか」

遺言能力とは、遺言を残す行為の意味とその結果について判断する能力を指します。この能力がない人が作成した遺言書は無効です。ただし、「遺言者が認知症を患っていた」という事実だけで直ちに遺言書の効力が否定されるわけではありません。遺言書作成時の認知症の進行状況や日常の判断能力など、様々な事情を考慮して決定されます。そのため、遺言書の効力を争うためには多くの証拠を集める必要があります。

遺言書の偽造が疑われる場合

相続に関するご相談の中には、次のような疑念を抱かれるケースもあります

  • 「他の相続人に手書きの遺言書を見せられたが、故人本人の筆跡か疑わしい」
  • 「遺言の内容が、故人が生前に話していた財産の分割方法とかけ離れている」

遺言書の筆跡が故人のものでない場合は、偽造があったとして効力が認められません。ただし、訴訟では筆跡鑑定だけで偽造の有無を判断するわけではなく、遺言の内容やその他の事情も考慮されるため、紛争が複雑化しやすいです。

遺言の効力を争う方法

札幌市近郊で多数の相続問題を取り扱ってきた弁護士が、遺言の内容に納得ができない場合に遺言の効力を争う方法をご説明いたします。遺言書の形式や遺言能力、偽造の疑いなど、さまざまなケースに応じて適切な対処法を提供いたします。お悩みの方はぜひご相談ください。

遺言の有効性調査とは?

遺言の有効性の判断方法

遺言の有効・無効の判断は、遺言書作成時の状況に大きく依存します。そのため、交渉や家事調停、遺言無効確認訴訟の際には、当時の状況を裏付ける証拠となる資料を可能な限り収集することが重要です。

例えば、「遺言書作成時に被相続人の認知状態に問題があり、遺言書を作成できる状態になかった」と主張する場合、遺言書作成当時やその近接した時期の被相続人の医療記録(診断書やカルテなど)や介護記録(介護認定時の主治医意見書、認定調査票など)を取得する必要があります。

また、「遺言書の筆跡が被相続人の筆跡と異なり、被相続人本人が作成したとは言えない」と主張する場合には、遺言書以外で被相続人が作成した書面を可能な限り多く準備します。一般的には年賀状や手紙、日記、手帳などが見つけやすいですが、遺言作成に近い時期のもので、コピーではなく原本を揃えることが望ましいです。

これらの資料をもとに、遺言の有効性が判断され、その結果に応じて対応が変わります。

遺言が無効になった場合の対応

交渉や調停、訴訟を通じて遺言が無効と判断された場合、法律的には遺言は元々存在しなかったものと同じ状態となります。そのため、相続人間で改めて遺産分割の内容について協議することになります。

ただし、遺言の効力を巡って紛争が既に発生している場合、当事者同士での協議が難しくなることが多いため、遺産分割調停や審判によって遺産分割の内容を決定することになります。

もし、遺言の無効が確認される前に遺言執行が進行し、遺言内容に従った財産の移転が既に行われていた場合でも、後に遺言が無効と判断されれば、その執行や財産移転の効果は生じません。そのため、当該財産を相続により取得することになった相続人は、受遺者(遺言により財産を受け取った人)に対して損害賠償請求や不当利得返還請求、相続財産が不動産の場合は抹消登記手続請求などを行い、改めて決定された遺産分割内容を実現することになります。

このように、遺言の有効性を巡る争いは複雑で専門的な知識が必要となります。お困りの際は、専門の弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

遺言が有効だった場合

遺言内容が有効と判断された場合、その遺言が遺留分を侵害していないかを確認することが重要です。

遺留分とは?

遺留分とは、遺言の内容に関係なく一定の相続人(遺留分権利者)に承継されるべき最低限の割合のことを指します。遺言内容がこの権利を侵害している場合、受遺者に対して遺留分侵害額請求を行い、法律で定められた範囲の遺留分を受け取ることができます。

遺留分侵害額請求の手続き

遺言無効確認請求と遺留分侵害額請求は同時に行うことが可能です。これは、遺留分侵害請求権が遺留分権利者が相続開始や遺贈等を知った日から1年以内に行わないと時効により消滅してしまうからです(さらに相続開始から10年間の除斥期間もありますが、こちらが問題になるのは稀です)。訴訟により遺言の有効性が認められてしまう事態を想定し、遺留分侵害額請求を内容証明郵便で行い、請求権を行使したことを証明できるようにすることが重要です。

遺言内容が有効であり、遺留分が侵害されていると確認された場合、遺留分権利者は次のような手続きを行います:

  1. 内容証明郵便による遺留分侵害額請求
    まずは受遺者に対し、内容証明郵便で遺留分侵害額請求を行います。これにより、請求の意思を正式に通知し、法的な請求権を確立します。
  2. 交渉
    受遺者との間で、遺留分侵害額の支払いについての協議を行います。この段階で合意に至ることができれば、紛争を解決できます。
  3. 家庭裁判所での調停
    交渉が不調に終わった場合、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停員を介して話し合いを行い、合意を目指します。
  4. 訴訟
    調停でも解決しない場合は、訴訟に発展します。裁判所での審理を経て、最終的な判断が下されます。

遺留分侵害額請求の重要性

遺留分侵害額請求を行う際には、できるだけ早く適切な措置を取ることが重要です。遺留分権利者が権利を行使しない場合、正当な取り分を失うリスクがあります。また、適切な法的手続きを踏むことで、無駄な争いや長期的なトラブルを避けることができます。

遺言が無効なことを主張するためには?

親戚に不幸があった際に、想定外の遺言が発見され、その遺言が無効であると主張する場合があります。その主張内容は、遺言の種類によって異なります。

(1) 自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言とは、遺言者がその全文・日付・氏名を自筆し、押印することで作成する遺言です。この遺言は最も簡単に作成できるため、広く利用されています。しかし、簡単に作成できる反面、紛失・偽造・変造のリスクが高く、内容が不明確な場合も多いため、有効性が争われることがよくあります。

遺言の法律上の決まりに反していると主張する

自筆証書遺言には一定の法律上の要件があります。遺言者が全文を自筆し、日付と氏名を記載し、押印することが必要です。この要件を満たしていない場合、遺言は無効とされることがあります。

例えば、パソコンで作成・印刷した遺言に署名押印しても、全文が自筆されていないため無効です。また、遺言者が高齢で自力で書くことが難しい場合に、他人が手を取って書かせた遺言も無効となることがあります。

弁護士に依頼すると、遺言の形式が法律の要件を満たしているかどうかを検討し、遺言の有効性を判断します。また、遺言を作成する際には、弁護士が形式の要件をチェックすることで、後に無効とされるリスクを防げます。

遺言能力がなかったと主張する

遺言能力とは、遺言を有効にするための資格のことを指します。原則として、15歳に達した者には遺言能力があります(民法961条)。しかし、遺言の意味を理解できない状態にある場合、遺言能力が否定され、遺言は無効となります。

例えば、遺言者が遺言作成時に認知症であり、遺言の内容を理解していたか疑わしい場合、遺言能力がなかったと主張することが考えられます。

遺言能力の有無は、認知症の診断だけでなく、遺言者の生活状況や日常の判断能力など様々な事情を総合的に判断します。弁護士に依頼すると、これらの事情を収集・分析し、遺言能力の有無を争うことができるか判断します。

偽造遺言であると主張する

遺言が偽造されていると主張する場合もあります。例えば、遺言書の筆跡が遺言者の他の文書と異なる場合や、内容が不自然な場合などです。

遺言が偽造かどうかは、筆跡鑑定だけでなく、遺言の内容や作成状況など様々な要素を考慮して判断されます。弁護士に依頼すると、これらの要素を収集・分析し、偽造の可能性があるかどうかを判断します。

(2) 公正証書遺言の場合

公正証書遺言とは、公証人という公務員が適法かつ有効に遺言がなされたことを証明する文書です。作成には、証人2人の立会いの下、公証人の面前で遺言者が遺言内容を口述し、公証人がその意思を文書にまとめます。

このようにして作成された公正証書遺言は、公証人が関与するため、通常は無効とされることがほとんどありません。しかし、以下のような場合には、公正証書遺言が無効とされる可能性があります。

遺言能力が否定される場合

自筆証書遺言と同様に、遺言者が遺言の意味を理解できる能力を欠いていた場合、公正証書遺言は無効となります。公証人は遺言者が遺言の意味を理解しているかを確認しながら作成しますが、確認が不十分であった場合などには、遺言能力が否定されることもありえます。

弁護士に依頼すると、遺言作成時に遺言者が遺言の意味を理解していたか、公証人がどのように遺言能力を確認したか、確認が十分だったかを調査し、公正証書遺言の無効の見込みを判断します。

口授が行われなかった場合

口授とは、遺言者が公証人に遺言内容を口頭で伝えることです。口授が適法に行われなかった場合、公正証書遺言は無効とされる可能性があります。例えば、遺言者がただ頷くだけだったり、「はい」と答えるだけだった場合、適法な口授がなかったと認定されることがあります。

弁護士に依頼すると、適法な口授がなされたかを調査し、公正証書遺言が無効とされる見込みがあるかを判断します。

遺言の有効性が認められてしまった場合はどうする?

例えば、Bさんが亡くなり、BさんにはAさんとCさんという子供がいるとします(Bさんの配偶者は既に亡くなっています)。Bさんが亡くなった後、「全財産をCに相続させる」という遺言が見つかりました。Aさんは遺言の有効性を検討しましたが、無効とされる見込みがないことが分かりました。

この場合、Aさんは全く財産を相続できないのでしょうか。答えはノーです。法律は、兄弟姉妹以外の相続人に対して、どのような遺言があっても最低限の取り分として遺留分を認めています。遺留分の額は、原則として法律上本来もらえるはずの相続分の半分です。*

例えば、Bさんの財産が3000万円だった場合、Aさんの法律上本来もらえるはずの相続分は1/2です。その半分の1/4にあたる750万円が遺留分となります。したがって、遺言の内容がどのようであっても、Aさんは最低でも750万円を相続できます。

弁護士に依頼した場合、まず遺言の有効性を争えるか検討します。その上で遺言が無効と主張できない場合は、遺留分を計算し、最低でも遺留分を相続できるよう主張します。

*相続人が直系尊属(亡くなった方の父母やそれより上の親族)のみの場合は、本来もらえる相続分の1/3が遺留分となります。

遺言の無効を主張する方法

では、遺言が無効である可能性がある場合、どのようにして遺言無効を主張するのでしょうか。もちろん、話し合いによる遺産分割協議も考えられますが、話し合いでまとまらない場合には、遺産分割調停や民事訴訟を行うことが考えられます。

(1) 遺産分割調停

まずは、遺産分割調停を申し立て、調停手続の中で遺言が無効であることを主張します。調停とは、裁判所が介入して行う話し合いの手続きです。当事者同士の話し合いで解決しなかったことでも、裁判官が双方の意見を聞き、遺言の有効性について裁判所の意見を述べることで、訴訟によらずに話し合いで解決する可能性があります。

(2) 民事訴訟

遺産分割調停でも解決に至らなかった場合、最終的に訴訟となります。具体的には、遺言が無効かどうかについて判決を求める遺言無効確認請求訴訟を提起することになります。この民事訴訟を提起するには、訴訟提起前に調停を申し立てた経験があることが必要です。

遺言無効訴訟の費用について

遺言の有効性調査

27万5,000円(税込)

遺言無効確認訴訟

着手金:55万円(税込)
報酬金:得られた経済利益額の11%(最低報酬規定あり)

<サービス内容>
・遺言無効を主張するための資料の収集・分析
・事前調査の結果を基に、お客様と相談し、遺言無効の主張を行うかどうかを判断

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この記事を書いた人

弁護士|注力分野:相続

現在は立川の支店長弁護士として相続分野に注力して奮闘しております。今後も相談者の心に寄り添い、活動していく所存です。どのような法律問題でも、お気軽にご相談ください。

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