生前に備える相続放棄!知っておくべき基礎知識を弁護士が解説

生前に相続放棄を検討することで、将来的なトラブルや負担を回避するための重要なステップを踏むことができます。このページでは、相続放棄の基礎知識から生前に行うべき準備、具体的な手続きについてわかりやすく解説します。早めの対策で、安心の相続を実現しましょう。

目次

生前に相続放棄はできない

被相続人が生前のうちに、相続放棄を行うことは認められていません。「他の相続人から『相続しない』という念書をもらった」という相談を受けることもありますが、残念ながらその念書には法的効力がありません。そのため、その相続人が被相続人の死後に相続権を主張した場合、「念書があるから相続できないはずだ」と主張しても、法的には認められません。

では、生前に相続放棄してもらいたい場合は、どのような対策があるのでしょうか?

生前に相続放棄を希望する場合の対処法

遺言書だけでは不十分

特定の相続人に財産を相続させたくない場合、遺言書を作成するだけでは不十分です。具体例で説明します。

例えば、相続人である花子さんには、一郎さんと次郎さんという2人の子供がいます。一郎さんは長年にわたり花子さんと同居し、身の回りの世話をしてきましたが、次郎さんは花子さんと関係が悪く、遠方に住んでおり全く会いに来ることがありませんでした。

この状況で、花子さんは遺産を全て一郎さんに相続させたいと考えました。そこで、一郎さんにすべての遺産を相続させる旨の遺言書を作成することが検討されます。

しかし、次郎さんには遺留分が認められており、遺留分を主張されると、花子さんの遺産の4分の1は次郎さんが取得することになります。遺言書だけでは遺留分まで放棄させることはできないのです。

遺留分の放棄をしてもらう

そこで、遺言書の作成に加えて、次郎さんに生前に遺留分の放棄をしてもらう方法があります。

遺留分を有する相続人は、被相続人が生存している間に、家庭裁判所の許可を得て、遺留分の放棄を行うことができます(民法第1049条)。これは、被相続人が相続人に遺留分の放棄を強要することがないように、裁判所が合理的な理由を確認する仕組みです。

ただし、遺留分の放棄は相続権そのものを失うわけではありません。たとえば、次郎さんが遺留分を放棄しても、遺言書がなければ、法定相続分に従い、次郎さんは遺産の半分を相続する権利を持つことになります。よって、遺留分の放棄だけでなく、相続させない旨の遺言書の作成も必要です。

推定相続人の廃除を申し立てる

推定相続人を家庭裁判所に申立てて廃除することも一つの方法です。推定相続人の廃除とは、相続人が被相続人に対して虐待や重大な侮辱などを行った場合に、その相続権を奪う制度です(民法第892条)。この申立てが認められれば、その相続人は相続権を失いますが、廃除は慎重に判断されるため、認められるケースは多くありません。

生前贈与を活用する

相続させたくない相続人以外に財産を生前贈与する方法もあります。しかし、遺留分には注意が必要です。遺留分は、相続時に被相続人が有していた財産に生前贈与の財産を加えた金額から算定されるため、生前贈与した財産も遺留分の対象となることがあります。その範囲を確認しながら、生前贈与の活用を検討する必要があります。

相続欠格について

相続欠格とは、特定の行為により相続権を失う制度です(民法第891条)。たとえば、被相続人を故意に殺害した場合や、遺言書を破棄した場合などが該当します。相続欠格に該当する場合、申立てなどは不要で、該当者は当然に相続権を失います。

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親の負債を相続したくない場合の対策

親に多額の借金があり、将来その負債を相続したくないと考える方もいるでしょう。しかし、生前に相続放棄を行うことはできないため、親が亡くなった後に相続放棄の手続きを進めるしかありません。

もし親の負債が心配であれば、弁護士に相談して生前から債務整理を検討するのも一つの方法です。自己破産やその他の債務整理を行うことで、借金が免除されたり、返済の目処が立ったりするため、相続人にプラスの財産を残せる可能性が高まります。ただし、親自身が債務整理に協力的でなければ、スムーズに手続きを進めることは難しいでしょう。将来の相続を見据え、親と子供でしっかり話し合い、方針を決めておくことが大切です。

遺言書では債権者の請求を防げない

遺言書を作成しても、債務を免れることはできません。例えば、相続人が2人いる状況で親に1,000万円の債務があった場合、「次男が借金を相続したくない」との理由で「負債を含めたすべての財産を長男に相続させる」という内容の遺言書を作成したとします。

しかし、債権者がその遺言内容を了承しない限り、債権者は遺言に関係なく、長男と次男にそれぞれ500万円を請求できます(民法第902条の2)。たとえ次男が「遺言書には借金を相続しないと書いてある」と主張しても、法的には認められません。

死後に相続放棄をする方法

相続放棄の手続き

親が亡くなった後は、相続放棄が可能です。相続放棄をする場合、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄申述書や住民票除票、除籍謄本などの必要書類を提出します。詳細な手続きについては裁判所の公式サイトで確認することができます。

相続放棄の期限

相続放棄には、原則として相続の開始を知った日から3ヶ月以内という期限があります。この期間内に相続財産を調査し、相続するかどうかを判断する必要があります。もし3ヶ月で判断が難しい場合は、期間の延長を申立てることも可能です。また、仮に期限を過ぎてしまった場合でも、特別な事情があれば相続放棄が認められることがあります。このような場合は弁護士に相談するのが良いでしょう。

弁護士 御厨

注意点として、3ヶ月以内であっても相続財産の一部を処分してしまうと、相続を承認したとみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。相続の決定をするまでは、財産の処分には慎重になることが重要です。

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この記事を書いた人

弁護士|注力分野:相続

現在は立川の支店長弁護士として相続分野に注力して奮闘しております。今後も相談者の心に寄り添い、活動していく所存です。どのような法律問題でも、お気軽にご相談ください。

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