「不動産は現金と違って消えることがないから安心だ」と考えている方は、一度立ち止まって確認してみることをお勧めします。実は、「土地を騙し取られた」「知らない間に家が他人の名義になっていた」など、登記に関するトラブルは決して珍しくありません。
今回は、不動産の登記にまつわる、知っておくべき典型的なトラブル事例を3つご紹介します。
トラブル1: 二重売買に注意
最初にご紹介するのは、所有者が二重に売買契約を結んでしまい、不動産が手に入らなくなるケースです。たとえば、ある土地を購入して所有権移転登記をしようとしたところ、登記簿上の所有者が売主と異なり、調べてみるとその売主が他の人にも土地を売ろうとしていた、という事例が発生します。
このようなケースでは、原則として先に所有権移転登記をした人が所有者としての権利を得ます。仮に、あなたが先に売買契約を結んでいたとしても、登記が完了していないとその権利は主張できません。契約自体は成立していますので、売主に支払った代金の返還を求めることはできますが、売主が連絡不能になってしまうリスクもあります。不動産取引では、登記手続きが完了する前に全額を支払わないように注意しましょう。
トラブル2:私道の持分登記漏れで売却困難に
次に紹介するのは、私道の持分登記が漏れてしまい、土地を売却できなくなるトラブルです。建築基準法によれば、道路に面していない土地には建物を建てられません。特に、公道に面していない場合は、私道を利用して自分の土地にアクセスすることになります。この私道が共有所有である場合、持分を登記していないと問題が発生します。
もし私道の持分登記がされておらず、証明書類もない場合、相続や売却の際に買い手が見つかりにくくなります。このように、私道に関する持分登記の漏れは、売却の際に大きな障害となり得るため、事前にしっかり確認しておくことが重要です。
トラブル3:相続登記の放置で相続人が増加
最後に取り上げるのは、相続登記を怠った結果、相続人が増え続けてしまうトラブルです。相続時に不動産の相続者を決めないまま放置すると、その不動産は全相続人の共有状態になります。相続が進むにつれて所有者が増え、問題が複雑化します。
例えば、相続人が次々に死亡し、その子供たちがさらに相続人になることで、不動産の所有権は複数に分散され、所有権を確定するための手続きが極めて煩雑になります。このような事態を避けるためにも、相続が発生した際には早めに登記を行い、所有者を確定させることが大切です。
登記は、不動産に関する権利を第三者に示すための大切な制度です。万が一、登記が漏れてしまうと、自分の権利を主張できなくなるリスクがあるため、実態に即した適切な登記を心がけましょう。