弁護士が教える!不動産相続手続きを円滑に進める方法

「不動産の相続手続き」は、遺産分割における重要なステップであり、多くの方が直面する課題です。この手続きには、相続人の確定や遺産分割協議、登記申請など、法律や行政手続きを含む多岐にわたる作業が必要です。この記事では、不動産相続手続きの基本から具体的な流れ、注意すべきポイントまでをわかりやすく解説します。スムーズな相続を実現し、トラブルを防ぐための有益な情報を提供しますので、ぜひご参考ください。

目次

不動産の相続手続きの流れ

不動産を相続する際は、次のステップに従って手続きを進めます。

遺言の有無を確認する

不動産の所有者が亡くなった場合、最初に遺言書の有無を確認します。遺言書があれば、その内容に従って相続が進むため、手続きの初期段階で必ず確認することが必要です。遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分け方を決めます。なお、遺言書が後から見つかった場合、その内容が優先されるため、早めに見つけることが大切です。

相続人を確定する

遺言書がない場合、法律で定められた範囲内の親族が相続人となります。そのため、亡くなった人の親族関係を戸籍謄本などで正確に確認し、相続人を確定することが必要です。相続人が後から判明した場合、遺産分割協議をやり直す必要があるため、初めにしっかりと調査しましょう。

相続財産の把握と財産目録の作成

相続財産の全体像を把握するため、預貯金や不動産などのリスト(財産目録)を作成します。預貯金は通帳や残高証明書で確認し、不動産については固定資産税の納税通知書や登記識別情報通知を確認するほか、役場での「名寄せ」や「所有不動産記録証明制度(2026年開始予定)」を利用することもできます。

遺産分割協議の実施

相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分け方を話し合います。不動産を引き継ぐ人が決まったら、その内容を遺産分割協議書にまとめ、全員が署名押印します。この協議は相続人全員が参加する必要があり、欠けている場合は無効となります。

相続登記の申請

不動産を引き継ぐ人が決まったら、相続登記の手続きを行い、不動産の名義を相続人に変更します。この手続きは法務局で行われ、2024年4月1日からは義務化されます。期限内に行わないと過料が科される可能性があるため、注意が必要です。

相続税の申告・納付

不動産を含む相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告が必要です。申告・納付期限は「相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内」となっており、期限を過ぎると延滞税が発生するため、早めに対応しましょう。

このように、不動産の相続手続きには多くのステップがあり、それぞれに注意が必要です。専門家に相談することで、スムーズに進めることができる場合もあります。

相続した不動産の分け方

不動産の所有者である父が亡くなり、母(妻)と長男、長女の3人が相続人である場合を例に、不動産をどのように分割できるかを解説します。

現物分割の方法

「現物分割」は、不動産をそのままの形で相続人の1人が受け継ぐ方法です。例えば、母(妻)が自宅を相続し、長男が預貯金を、長女が有価証券をそれぞれ相続するようなケースが考えられます。また、150坪の土地を50坪ずつに分筆(1つの土地に境界線を引き、3つの土地に分けること)して、各相続人がそれぞれ取得する方法も現物分割の一例です。

この方法はシンプルでわかりやすい反面、不動産の価値が他の財産と大きく異なる場合や、土地の形状や日当たり、接道状況によって不動産の評価が変わることもあり、不公平感が生じることがあります。そのため、相続人の間で不満が出る可能性がある点に注意が必要です。

代償分割の方法

「代償分割」は、相続人の1人が不動産を単独で相続する代わりに、他の相続人に対して代償金を支払う方法です。これは、特定の相続人が他の相続人の不動産に対する相続分を金銭で買い取るような形になります。

例えば、相続財産が評価額4,000万円の土地だけの場合、長男がその土地を単独で相続し、その代わりに母と長女の相続分(母が4分の2、長女が4分の1)に相当する3,000万円を代償金として支払う方法です。この場合、母や長女が土地を引き継ぎたくないという希望があり、代償金が正当な評価に基づいて計算されていれば、不満が出にくい方法といえるでしょう。しかし、長男にその代償金を支払う資力がない場合には、この方法の実施が難しくなることもあります。

換価分割の方法

「換価分割」は、相続財産である不動産を売却して現金化し、その現金を相続人で分割する方法です。

例えば、不動産を4,000万円で売却した場合、母が2,000万円、長男と長女がそれぞれ1,000万円を受け取るという方法です。この方法では、現金を分けるため平等に分配することが容易ですが、その不動産に相続人が住んでいる場合や、売却が困難な物件である場合は、実際に売却すること自体が難しいこともあります。

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不動産を相続するための必要書類

不動産を相続する際には、「相続登記」が必要です。相続登記とは、故人(被相続人)の名義となっている不動産を、相続人の名義に変更する手続きのことです。たとえば、亡くなった父親の名義の不動産を長男が相続する場合、長男はその不動産の所在地を管轄する法務局に相続登記を申請し、父親の名義から自分の名義へ変更する必要があります。

それでは、相続登記に必要な書類にはどのようなものがあるのでしょうか。

相続登記には主に、「遺言による相続登記」「遺産分割による相続登記」「法定相続分による相続登記」の3つのケースがあります。それぞれの場合に必要となる書類を詳しく見ていきましょう。

なお、以下に記載する必要書類は、配偶者や子が相続人となる一般的な相続を想定しています。故人の兄弟姉妹が相続人になる場合、子や兄弟姉妹が既に死亡していた場合の「代襲相続」、複数の相続が連続して発生する「数次相続」など、特殊な相続の場合には、別の書類が必要になることがありますのでご注意ください。

遺言による相続登記の必要書類

遺言書が存在する場合、原則として遺言書の内容に従って相続登記を申請します。自筆証書遺言の場合は、相続登記を申請する前に、家庭裁判所で「検認」という手続きを行う必要があります。検認は、遺言書の内容を確認し、偽造や改ざんを防ぐために家庭裁判所で行われ、相続人の立ち会いのもとで遺言書を開封する手続きです。ただし、公正証書遺言や法務局の遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言には、検認手続きは不要です。

遺言による相続登記の場合、必要な戸籍謄本が少ないのが特徴です。具体的には、「遺言の効力が発生したこと(遺言者の死亡)」と「不動産を取得する人が相続人であること」の2点を証明する戸籍謄本を添付すれば足りるとされています。したがって、被相続人については出生から死亡までのすべての戸籍謄本を揃える必要はなく、相続人についても不動産を取得しない相続人の戸籍謄本は不要です。

遺産分割による相続登記の必要書類

遺言書が存在せず、複数の法定相続人がいる場合、相続財産は一旦相続人全員の共有となります。この共有状態を解消し、具体的に誰がどの財産を取得するかを決める手続きが「遺産分割協議」です。遺産分割協議は、全ての法定相続人が参加して行う必要があり、1人でも欠けた場合には無効となります。

遺産分割協議により不動産の取得者が決定した場合、遺産分割による相続登記を申請します。この手続きには、遺産分割協議書や全ての法定相続人の印鑑証明書を添付する必要があります。また、法定相続人全員による有効な協議が行われたことを証明するため、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本や改製原戸籍を含む)と、全ての相続人(不動産を取得しない者も含む)の戸籍謄本も必要です。

法定相続分による相続登記の必要書類

遺言書がなく、遺産分割協議が行われていない、または協議がまとまらなかった場合、法定相続人全員の名義で、民法で定められた法定相続分通りに相続登記を申請することができます。ただし、この方法では、不動産が共有状態になる点に注意が必要です。

共有不動産は、管理や処分方法について共有者間でトラブルが発生することが多く、さらに共有者に相続が発生すると権利関係が複雑化するなど、さまざまなリスクがあります。そのため、法定相続分による相続登記を行うと、将来的に問題が増える可能性があるため、慎重な判断が必要です。

法定相続分による相続登記に必要な書類は、遺産分割の場合とほぼ同じですが、遺産分割協議が行われていないため、遺産分割協議書や相続人の印鑑証明書は不要です。

不動産の相続手続きは自分でできるのか?

不動産の相続手続きを自分で行いたいと考える方も多いと思いますが、それは可能なのでしょうか。以下では、その難易度や注意点について解説します。

必要書類を自分で揃えるのは手間がかかる

相続登記に必要な書類を全て揃えるには、かなりの手間がかかります。
特に戸籍謄本の取得はこれまで、本籍地のある市区町村役場でしかできず、本籍地が遠方の場合は時間と労力が必要でした。しかし、2024年3月からは、本籍地に関係なく最寄りの市区町村役場でまとめて取得できるようになり、負担が大幅に軽減されました。

ただし、兄弟姉妹の戸籍謄本やコンピュータ化されていない戸籍謄本については、従来どおり本籍地の役場に出向くか郵送で請求する必要があります。郵送で請求する場合、請求書の記入ミスや小為替の不足で手続きがスムーズに進まないケースも多く、この段階で挫折してしまう人も少なくありません。

書類作成には法律の知識が必要

戸籍謄本の取得後には、遺産分割協議書や登記申請書といった書類を作成する必要があります。
これらの書類を正確に作成するためには一定の法律知識が求められ、記載に誤りがあると法務局から訂正や差し替えを求められることがあります。

そのため、書類作成に慣れていない方や法律の知識がない方は、最初から専門家に依頼する方が時間や労力を節約できる場合もあります。

相続人同士が疎遠または不仲な場合は専門家に相談を

相続人同士が疎遠であったり不仲であったりすると、遺産分割協議が難航し、手続きが進まないことがあります。また、不動産の名義が曽祖父のままなど、相続人が多くなり、関係が複雑化するケースも少なくありません。

このように相続関係が複雑だったり、争いが生じる可能性が高い場合には、無理に自分で手続きを進めるのではなく、最初から専門家に相談することをおすすめします。専門家に依頼することで、手続きがスムーズに進むだけでなく、将来的なトラブルを避けることもできます。

弁護士 御厨

不動産の相続手続きは、非常に複雑で時間のかかる作業です。
必要となる書類も多岐にわたり、最寄りの市区町村役場で取得できるものもあれば、住所地や本籍地でしか手に入らないものもあります。すべての書類を自分で集めて申請するには、相当な知識と労力が求められます。さらに、市区町村役場や法務局は平日のみの営業であるため、忙しい方にとっては手続きを進めるのが難しいこともあるでしょう。
また、2024年4月1日から相続登記が義務化されたため、より迅速に相続登記を行うことが必要になります。「早急に正確な相続登記を行いたい」「必要書類を揃えるのが難しい」「相続登記をせずに放置している不動産がある」など、相続登記について不安や疑問を抱えている方は、弁護士に相談することをお勧めします。

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この記事を書いた人

弁護士|注力分野:相続

現在は立川の支店長弁護士として相続分野に注力して奮闘しております。今後も相談者の心に寄り添い、活動していく所存です。どのような法律問題でも、お気軽にご相談ください。

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