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事業を継いだ相続人が遺産分割に難色を示す理由

親の事業を引き継いだ相続人が、遺産の開示を拒んだり、遺産分割の話し合いに消極的になることが少なくありません。これは、事業を承継した兄弟が遺産である不動産を事業用や自宅として使用している場合が多いためです。彼らにとって、遺産分割は「代償金の支払い」を意味するため、積極的には応じたくないという心理が働くことがあるのです。

代償金を支払うための十分な現金や預金があれば問題は少ないですが、そうでない場合、代償金の用意が難しくなることがあり、その結果、法定相続分に基づく遺産分割に対して抵抗を示すことがあります。

一方で、事業を継がなかった相続人は、自身の力で生活を切り開いてきたため、相続の場面では法律に基づいた公正な分配を求めたいという思いを強く持つことが多いです。特に、事業を継いだ兄弟が親との関係が悪かった場合や、親からの支援を十分に受けていない場合、その気持ちは一層強まるでしょう。

弁護士 御厨

民法では、後継者であるかどうか、長男であるかどうか、結婚して家を出たかどうかにかかわらず、兄弟全員が平等に相続権を持つと定められています。したがって、法律に基づく正当な遺産分割を求めることは当然の権利であり、ためらう必要はありません。

では、親の事業を継いだ兄弟が遺産を分けてくれない場合、どのように対応すればよいのでしょうか?

遺産の範囲を把握するための手順

(1) 遺産の開示を求める

事業を引き継いだ相続人や配偶者だけが遺産に関する情報を持っており、他の相続人にはその内容が不明確な場合がよくあります。このような場合、まず遺産情報を持つ相続人に対して、遺産の内容(資料)の開示を求めることが重要です。遺産の内容が明確になるまでは、遺産分割の交渉を始めるべきではありません。なぜなら、法定相続分に従った分割を希望すると感情的な対立が生じ、情報が得られなくなるリスクがあるからです。

(2) 遺産の開示が拒まれた場合

では、遺産の情報を持つ相続人が開示を拒んだ場合はどうなるでしょうか?

結論として、遺産を管理している相続人に対して強制的に遺産内容を開示させるための有効な手段や手続きは存在しません。したがって、相続人の一人が情報を開示してくれない場合、他の相続人は自分で遺産の調査を行う必要があります。

相続人としての資格を利用し、銀行や証券会社などに照会することで一部の遺産の内容を把握することは可能です。しかし、すべての金融機関を網羅することは難しく、漏れが生じることがあります。また、自宅の金庫内の現金や他者に貸している金銭、非上場株式など、把握が難しい遺産も多く存在します。そのため、遺産分割の交渉を始める前に、まずは相手に遺産の資料の開示を求めることが一般的な手順です。

法定相続分による分配が拒否された場合の対処方法

遺産に関する資料を取得し、その内容が明確になったら、次に遺産分割の交渉を進める必要があります。しかし、事業を引き継いだ相続人が代償金の支払いを避けたいと考えるため、法定相続分に基づく遺産分割を拒否することがしばしばあります。このような場合、どのように進めるべきでしょうか?

まず、こちらの考える遺産分割案を文書化し、相手に提出します。その際、抽象的な提案ではなく、具体的な金額を含む詳細な表を作成し、各相続人がどの財産をいくら取得するのかを1円単位で明示した遺産分割案を提示します。

次に、相手がこちらの案に同意しない場合は、どの部分に異議があるのかを確認し、こちらが譲歩できる範囲で修正案を作成し、再度提案します。このように交渉を繰り返し、合意に達することができれば、遺産分割は話し合いによって解決できます。

しかし、どれだけこちらの提案が正当であっても、相手が自身の主張に固執し、分割案がまとまらない場合には、最終的に遺産分割調停を申し立てることになります。

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代償金をどのように用意してもらうか

遺産分割の交渉や調停の過程においても、相手方が代償金を用意できなければ、代償金を受け取ることはできません。では、相手にどのようにして代償金を用意してもらうべきでしょうか?

① 不動産の売却

複数の不動産がある場合には、一部の不動産を売却して、その資金で代償金を用意してもらうことが考えられます。

弁護士 御厨

不動産を売却し、現金に変えると、公平に分けることができるという考え方ですね。

② 借入を依頼する

相手が法人を継いでいる場合、その法人のメインバンクから借入を行い、代償金を用意してもらう方法もあります。

また、法人でなくても、遺産分割に伴う代償金の支払いを目的とした融資を提供している銀行があります。そのような銀行から借入を行い、代償金を用意してもらうことも一つの方法です。

③ 分割払いでの受け取り

最後に、できるだけ避けたい方法ではありますが、代償金を分割払いで受け取ることも選択肢の一つです。この場合、相手が取得する不動産に抵当権を設定するよう交渉すれば、相手が支払いを怠った際にその不動産を競売し、代償金を一括で回収することが可能です。抵当権が設定されている場合、相手は通常、支払いの遅延を避けるために分割金を確実に支払うでしょう。そのため、十分な担保価値のある不動産に抵当権を設定できれば、代償金の回収が確実となり、時間はかかるものの有効な方法と言えます。

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弁護士 御厨

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この記事を書いた人

弁護士|注力分野:相続

現在は立川の支店長弁護士として相続分野に注力して奮闘しております。今後も相談者の心に寄り添い、活動していく所存です。どのような法律問題でも、お気軽にご相談ください。

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