年金と遺産相続!~必要な4つの手続きについて~

 年金と遺産相続に関する知識は、家族や大切な人々を守るために重要です。このガイドでは、年金受給における遺産相続の影響や注意すべきポイントをわかりやすく解説します。スムーズな相続手続きや、将来の安心のために知っておくべき基本情報を提供します。家族の未来を守るために、今からできる準備を始めましょう。

目次

年金の支給停止手続きについて

 年金は受給者が亡くなると相続の対象とはならず、年金受給の権利は消滅します。そのため、年金受給者が亡くなった際には、年金事務所または年金相談センターに「年金受給権者死亡届(報告書)」を提出する必要があります。

 ただし、個人番号(マイナンバー)が日本年金機構に登録されている場合は、原則としてこの「年金受給権者死亡届(報告書)」の提出が省略されます。

 手続きには、亡くなった方の年金証書や、除籍謄本や死亡診断書のコピーなど死亡を証明する書類が必要です。手続きの期限は、国民年金では死亡日から14日以内、厚生年金では10日以内となっています。

 受給者が亡くなった際は、速やかに支給停止手続きを行いましょう。

未支給年金の請求手続きについて

 亡くなった方の未支給年金があるかどうかを確認しましょう。公的年金の支給は2ヵ月ごとの後払いで行われるため、ほとんどの場合、未支給年金が発生しています。

 未支給年金は、亡くなった方と生計を共にしていた遺族が請求できます。請求手続きは、年金事務所や年金相談センターで「未支給年金請求書」を提出することで行います。受給できる方は、亡くなった時点でその方と生計を共にしていた遺族であり、優先順位は以下の通りです:①配偶者、②子ども、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹、⑦その他の順番。

 未支給年金の請求手続きには、亡くなった方の年金証書、続柄を確認できる書類(戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写しなど)、生計を共にしていたことを証明する書類(亡くなった方の住民票および請求者の世帯全員の住民票など)、および受取希望の金融機関の通帳が必要です。同一世帯でない場合は、「生計同一についての別紙の様式」も提出が必要となります。

国民年金(遺族基礎年金)の手続きについて

 亡くなった方が国民年金の加入者であった場合、その方によって生計を維持されていた「18歳到達年度の末日までの子ども(障害がある場合は20歳未満)を持つ配偶者」または「子ども」が遺族基礎年金を受給できます。この年金は、子どもが18歳になる年度の3月31日(障害等級1級・2級の子どもは20歳)まで受給可能です。

 「生計を維持されている」とは、同じ家計で生活していた方で、受給者の前年の収入が850万円未満、または所得が655万5000円未満であることを指します。

 遺族基礎年金を請求するには、年金請求書(市区町村役場、年金事務所、または年金相談センター窓口にて入手)、亡くなった方の年金手帳、戸籍謄本や住民票、収入証明書、受取希望の金融機関の通帳などが必要です。

 年金額(令和3年4月分以降)は「780,900円+子どもの加算」となっており、子どもの加算は、第1子と第2子がそれぞれ224,700円、第3子以降は74,900円となっています。受給額は毎年見直されるため、請求時に最新の情報を確認してください。

受給資格について

 もし亡くなった方が令和8年4月1日以前に亡くなった場合、65歳未満で、死亡日前日までの1年間に保険料の未納がなければ、「遺族基礎年金」が受給できます。令和8年4月1日以降に亡くなった場合は、保険料納付期間が加入期間の3分の2以上であることが条件となります。

その他の支給金について

 子どもがいない場合には遺族基礎年金は受け取れませんが、「死亡一時金」を受け取ることができます。国民年金第1号被保険者または任意加入被保険者として36カ月以上保険料を納付していた方が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受給せずに亡くなった場合、その遺族が死亡一時金を受給できます。受給額は保険料納付期間に応じて12~32万円の範囲で決定されます。ただし、遺族基礎年金が受給できる場合は、死亡一時金は支給されません。

 また、亡くなった方が第1号被保険者または任意加入被保険者で、保険料納付期間(免除期間含む)が10年以上ある場合、その妻(内縁の妻も含む)が生計を維持されていれば、60歳から65歳まで寡婦年金が支給されます。

労災保険の遺族年金について

 労災保険の遺族年金は、①業務中の事故で亡くなった場合(遺族補償給付)や、②通勤途中で亡くなった場合(遺族給付)が対象となります。遺族補償給付には、「遺族(補償)年金」と「遺族(補償)一時金」の2種類があり、これらを受給するためには、労災保険に加入していることに加え、労災認定を受けていることが必要です。労災認定を受けていない場合は、専門家に相談することをお勧めします。

 なお、労災保険の遺族年金を受給する際に、遺族基礎年金や遺族厚生年金を同時に受給できる場合、遺族年金の額が減額されることがあります。

 遺族年金の請求手続きは、所轄の労働基準監督署長に必要書類を提出して行います。

年金の支払いは亡くなった月まで

年金の支払いサイクルについて

年金の支払いは、亡くなった月までが対象です。公的年金は、偶数月の15日に年6回に分けて支給されます。支払いは日割り計算されず、たとえ月の初日に亡くなってもその月の分は全額支給されます。

 偶数月に亡くなると1ヵ月分(もしくは3ヵ月分)、奇数月に亡くなると2ヶ月分の未支給年金が発生することがあります。この未支給年金は、支払いがまだ行われていない分の年金を指します。

 たとえば、4月10日に亡くなった場合は2月、3月、4月分が、4月20日に亡くなった場合は4月分が、5月20日に亡くなった場合は4月と5月分が未支給年金となります。

年金受給者が亡くなった際の手続き

 年金受給者が亡くなった場合、遺族が受給権者死亡届を提出する必要があります。もし届の提出が遅れ、死亡日以降の年金が被相続人の口座に振り込まれた場合、その分を返却する必要があります。たとえば、4月30日に亡くなった場合、6月15日に4月分と5月分が振り込まれたら、5月分を返却しなければなりません。

未支給年金は相続財産に含まれません

 未支給年金は、被相続人と生計を共にしていた人が請求する権利を持っています。そのため、未支給年金はその人の財産となり、相続財産には含まれず、一時所得として扱われます。この点については、平成7年11月7日の最高裁判決で判例が示されています。

未支給年金(障害厚生年金等)が相続財産となる場合とならない場合

以下は、障害厚生年金等の未支給年金が相続財産と見なされた事例と、見なされなかった事例の一例です。

相続財産になった事例

 被相続人A様は長年ガンで入退院を繰り返しており、年金事務所に障害者年金の支給申請を行っていました。A様は令和3年3月に亡くなり、その後、3月15日に約700万円がA様の口座に振り込まれました。この場合、A様が生前に申請し、決定されて支給されたものであるため、相続財産に含められました。

相続財産にならなかった事例

 B様は令和2年(2020年)12月に亡くなり、B様の母親の口座に障害厚生年金の未支給年金として約190万円が振り込まれました。このケースでは、未支給年金はB様の相続財産には含まれませんでした。

 障害厚生年金が生前に支給されていれば、所得税法上非課税とされ、遺族が受け取る未支給年金も、厚生年金保険法の規定により非課税所得として扱われ、一時所得の対象にはなりません。障害厚生年金は非課税所得とされ、遺族の一時所得には含まれないと考えられます。

弁護士 御厨

 相続が発生すると、亡くなった方の年金の手続きが必要となります。
 また、亡くなった方の収入で生計を立てている場合、遺族年金等の給付を受けられないと生活に支障が出てしまいます。
そのため、相続が発生したら、速やかに年金に関する手続きを行うようにしましょう。
 分からないことや相続手続についても確認したいという場合は、ぜひ相続に詳しい弁護士にご相談ください。

弁護士による相続の相談実施中!

当事務所では、初回相談は30分無料となっております。

「遺産分割でトラブルになってしまった」
「不安なので相続手続きをおまかせしたい」
「子どもを困らせないために生前対策をしたい」

などのニーズに、相続専門の弁護士がお応えいたします。お気軽にご相談ください。

相談の流れはこちら>>

当事務所の相続問題解決の特徴

  • 相続に強い弁護士がサポート!
  • 不動産の専門家と連携するので安心!
  • LINEでやりとりがスムーズ!
  • 相続税まで相談可能!
  • 立川から徒歩3分の好立地!

詳しくはこちら>>

お電話でのお問い合わせ

ボタンを押すと電話が掛けられます

Web予約はこちら

たった1分でカンタン!

スクロールできます
時間
9:00~12:00
12:00~18:00
土曜日につきましては無料相談会をやっております。

この記事を書いた人

弁護士|注力分野:相続

現在は立川の支店長弁護士として相続分野に注力して奮闘しております。今後も相談者の心に寄り添い、活動していく所存です。どのような法律問題でも、お気軽にご相談ください。

目次