クライアント情報
多摩市在住 (40代女性)
問題となっていた事柄
ご依頼者様は生前、父親と長年確執があり、ほとんど連絡を取っていない状態でした。しかし昨年12月、父が末期の癌であると知らされ、和解のうえ何度か病院を訪れていました。父の財産や借金については、弟がすべて管理しており、ご依頼者様が知る限り、預貯金約600万円があるのみでした。
ところが、父が亡くなった後の令和7年3月3日、初めて叔母と叔父から、父には叔母への借金800万円、叔父への借金200万円があったことを知らされます。父は生前、「借金のことを娘に知らせるな」と周囲に言い含めていたため、これまで一切聞かされていませんでした。この時点で、父が亡くなった日からはすでに3か月以上が経過しており、相続放棄の期限(通常、死亡を知った日から3か月以内)が問題となりました。
争点
・相続放棄の期限である「自己のために相続の開始があったことを知った日から3か月以内」に該当するのは、父の死亡を知った日か、それとも債務の存在を知った日か。
・父の死亡後に初めて多額の債務を知ったことが、相続放棄を認める特別な事情として認められるか。
弁護士が介入した結果
弁護士は、ご依頼者様から詳しい事情を聴取した上で、裁判所に対し相続放棄の申述を行い、同時に「債務の存在を知ったのは令和7年3月3日であり、それまでは父に借金があることを知らなかった」という内容の上申書を提出しました。
結果として、裁判所は父の死亡から3か月以上が経過していたものの、債務の存在を知らなかったことに合理性があると判断し、ご依頼者様の相続放棄を認めました。
ポイント
相続放棄は原則として「相続開始を知った日から3か月以内」に行わなければなりませんが、相続財産に多額の債務が隠れていて、これを知らなかった場合には、例外的に認められる可能性があります。
相続放棄を検討している方は、早めに弁護士に相談することをお勧めします。