東京都立川市の法律事務所|独身・子なしの生前対策|法定相続人と5つの備えを弁護士が解説

こんにちは。東京都・立川市のスフィア法律事務所の代表弁護士のみくりやです。本日は、「独身・子なしの生前対策|法定相続人と5つの備えを弁護士が解説」について、詳しくお話ししていきます。

「独身で子どももいない自分の場合、亡くなった後、財産はどうなるのだろう」——独身で子のいない、いわゆる「おひとりさま」の方から、生前対策のご相談をいただく機会が増えています。実は、独身・子なしの相続には、ご家族がいらっしゃる方の相続にはない独特の落とし穴があります。本記事では、法定相続人の考え方から、遺言書、任意後見、死後事務委任契約まで、独身・子なしの方が押さえておきたい生前対策を、実務の目線で解説します。

目次

独身・子なしの法定相続人は誰?意外に知られていない相続の順位

独身で子のいない方の場合、法定相続人はどうなるでしょうか。順位は法律で定められており、まず第1順位はご両親、ご両親が既にお亡くなりの場合には第2順位として兄弟姉妹が相続人となります。そして、兄弟姉妹のうちご自身より先に亡くなっている方がいれば、その方の子である甥や姪が代襲相続人となります。

ご相談を受ける中で強く感じるのは、「兄弟姉妹が相続人になる」ということ自体を意外とご存じない方が多いという点です。「自分に子どもがいなければ財産は自動的に国のものになる」といったイメージをお持ちの方もいらっしゃいます。さらに、「兄弟姉妹がすでに亡くなっていると、甥や姪まで相続の権利が及ぶ」ということも、多くの方にとっては驚きの事実です。

もう1つ、印象に残っているのが、ご両親がご健在ではあるものの認知症を患っているという方が「うちの両親は認知症だから、相続人にはならない気がする」とおっしゃったケースです。判断能力の有無は相続人の資格そのものには影響しません。ご両親がご健在である以上、法律上は第1順位の相続人として遺産分割の当事者になります。判断能力と相続資格は別、というのは、独身子なしの方の相続を考える上でも大切な視点です。

対策をしないままだと起きる4つの問題

生前対策をしないままだと、独身・子なしの方の相続では、ご家族のある方の相続とはやや違った困難が生じます。

1点目は、疎遠な相続人との手続きの難しさです。兄弟同士の相続だと、そもそも生計もお住まいも別々になっていて、「兄弟がどこに住んでいるか分からない」「そもそも生きているのか分からない」というパターンが実に多くあります。連絡先を探すところから始めなければならず、そのまま何年も遺産分割が進まないことも少なくありません。

2点目は、相続人自身が高齢化していて手続きを進められないというリスクです。ご兄弟の人数が多く、下のご兄弟が先に亡くなったようなケースでは、上のご兄弟が既に認知症を患っておられ、遺産分割の話し合いに参加することが困難になっている事例もあります。相続人の中に判断能力に問題のある方がいると、成年後見人の選任が必要になり、手続きが大きく遅れます。

3点目は、財産を「渡したい相手」に渡らないことです。長年支えてくれた内縁のパートナー、日ごろから気にかけてくれる姪や甥、心を許せる友人やお世話になった施設。こうした方々は、遺言書がなければ1円たりとも受け取ることができません。

4点目は、死後の手続きを担う人がいないことです。葬儀、納骨、賃貸住居の退去、遺品整理、公共料金の解約——こうした「亡くなった後の実務」は、通常はご家族が担いますが、独身・子なしの場合はその担い手そのものが不在になりがちです。

最も重要な備え:遺言書(兄弟姉妹に遺留分がない強み・老後資金の見立て)

独身・子なしの生前対策で最も重要なのが、遺言書の作成です。そして、この場面での遺言書には、ご家族のある方の遺言書にはない大きな「強み」があります。それが、兄弟姉妹には遺留分がないという点です。

法定相続人が子や親の場合には、遺言書で「全額を◯◯へ」と指定しても、遺留分に相当する部分は請求されるリスクが残ります。しかし、兄弟姉妹や甥姪には遺留分がありません。つまり、遺言書でご自身の希望通りの相続を指定すれば、それがそのまま実現できるのです。この点をお伝えすると、非常に喜んでいただけます。特に、ご両親の相続で兄弟姉妹と揉めた経験があり、その後関係が疎遠になってしまった方などは、「遺言書があれば思い通りにできる」と知って、安堵の表情を見せてくださいます。

一方で、遺言書を書く上で悩みの種になるのが、「実際に何を、いくら、誰に遺すのか」という具体的な設計です。ここで欠かせないのが、老後資金の見立てです。ご自身が一生おひとりで暮らしていくのか、施設に入る可能性はあるのか、どのくらいの生活水準を維持したいのか——そういった生前の資金計画がなければ、亡くなったときに何が手元に残るかも見通せません。ご自身の預貯金が幾ら残るのか、ご自宅を売却する必要があるのか——それによって「遺せるもの」の姿が決まり、遺言書の内容も自ずと決まっていきます。

まずは生前の資金計画を立てて、その上で遺言書の内容を組み立てる——独身・子なしの生前対策では、このステップが特に重要になります。

判断能力が落ちたときへの備え:任意後見契約と見守り契約

万一、ご自身の判断能力が落ちてしまった場合の備えとして重要なのが、任意後見契約です。判断能力があるうちに、将来判断能力が低下した場合の財産管理や生活面のサポートを、誰にお願いするかをあらかじめ決めておく契約です。独身・子なしの方の任意後見人としては、いとこや姪などご親族の中で信頼できる方を指定される方が多く、姪との関係が深く姪を指定するといったケースもよくあります。

ただし、実務でこの契約を組むときに最も難しいと感じるのが、「いつ発動するか」の見極めです。任意後見契約は、締結しただけでは効力が発生しません。判断能力が低下したときに、家庭裁判所へ任意後見監督人の選任を申し立て、監督人がついてはじめて開始します。今後、任意後見監督人が不要になる制度改正も検討されていますが、そうなるとむしろ「発動時期」の見極めがより一層難しくなります。契約を結んだだけでは、必要なタイミングを見逃してしまう恐れがあるのです。

この見極めの担い手となるのが、見守り契約です。判断能力があるうちから定期的に連絡や訪問を受け、様子を確認してもらう仕組みで、任意後見の発動時期を客観的に判断する目としての役割を果たします。独身・子なしの方は、日常的にご様子を見守る家族が身近にいないケースも多いため、任意後見契約と見守り契約はセットで検討していただきたい制度です。

死後の手続きを託す「死後事務委任契約」

亡くなった後の実務——葬儀、納骨、賃貸住居の退去、公共料金の解約、遺品整理、SNSアカウントの削除、ペットの引き取りなど——を、あらかじめ誰かに委任しておく契約が、死後事務委任契約です。

これらの死後の手続きは項目が非常に幅広く、内容も専門的です。そのため、この分野を専門にしている民間の業者に依頼するのが、実務上は最も現実的な選択肢になります。弁護士事務所やNPO、専門的な業者などが提供する死後事務委任のパッケージを利用することが多いです。

もう1つ大切なのが、契約するタイミングです。葬儀の形式・場所、納骨する場所、どの遺品を誰に譲るのかといったことは、ご本人がお元気なうちにきちんと打ち合わせをしておかなければなりません。判断能力が低下してからでは、細部を詰めることが難しくなり、ご希望通りの内容にならない恐れがあります。「まだ元気だから」と後回しにするのではなく、なるべく早いタイミングで契約を締結し、内容を作り込んでおくことをおすすめしています。

死後事務委任契約は、独身・子なしの方が「亡くなった後、周りに迷惑をかけずに、自分の思い通りに事を進める」ための、いわば最後の砦です。

相続人がいない場合の財産の行方——特別縁故者と国庫帰属

法定相続人が完全にいないというケースには、私自身は実務で出会ったことがありませんが、相続人がいたはずなのに、全員が相続放棄した結果、実質的に相続人がいなくなってしまったというケースはあります。例えば、被相続人に多額の借金があった場合など、ご兄弟や甥姪が全員相続放棄されると、財産を管理する相続人がいない状態になります。

そうなると、賃貸物件の大家さんや、被相続人にお金を貸していた債権者は、請求先や退去手続きの相手方が誰なのか分からず、非常に困った状況に陥ります。相続財産清算人の選任申立てや公告といった手続きを経て、最終的には特別縁故者への財産分与や国庫帰属へと進みますが、いずれにしても時間と手間がかかります。

こうした結果、周囲に大きな迷惑をかけてしまうことになりかねません。独身・子なしの方は、ご自身の状況として、こうした「相続人が結果的にいなくなる」ケースまで想定して対策を考えていただきたいところです。具体的には、これまでご紹介した死後事務委任契約をきちんと結んでおくこと。それに加えて、遺贈寄付——ご縁のあった団体やお世話になった施設への遺言による寄付——という選択肢を検討することも、有力な備えの1つです。相続人がいなくても、遺言書と適切な契約があれば、ご自身の意思をきちんと実現することができます。

まとめ

独身・子なしの方の相続では、法定相続人はご両親、次いで兄弟姉妹、その代襲としての甥姪となります。「兄弟姉妹が相続人になる」「甥姪まで及ぶ」ということは意外と知られておらず、対策をしないままだと疎遠な相続人との手続き困難、相続人自身の高齢化、財産が望む相手に渡らない、死後の手続きを頼めない——といった問題が現実に生じます。

有効な備えは複数あります。最も重要なのは遺言書の作成。兄弟姉妹には遺留分がないため、生前の資金計画を踏まえて希望通りの内容を実現できます。加えて、任意後見契約と見守り契約で判断能力低下への備えを、死後事務委任契約で死後の手続きの担い手を確保します。相続人がいない結果になる場合を想定するなら、遺贈寄付という選択肢も視野に入ります。

いずれもご本人がお元気なうちに準備しておく必要があります。「独身・子なしだからこそ、今から少しずつ備えていく」——これが将来のご自身と、周囲の方への最大の思いやりになります。ご検討の際は、早めに弁護士など専門家にご相談されることをおすすめします。

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